「やっぱりあれは……そうだったとしか思えない」



 年若い使用人の疑問に答えるように、年長の使用人――メアリが話し始めた。



 聞き耳まで立てておいて何だが、メアリが話に乗って来たのは意外であった。



 メアリは、私が生まれる前からここで働いているベテランの使用人である。だが、担当している仕事が炊事場や掃除なので、あまり私とは関わることがない。



 しかし、寡黙ではあるが、真面目な働き者という印象は持っている。



 そのメアリが、諫めるどころか、自ら口を開いているのだ。



 この件に関して、メアリには、何かしら思うところがあるのだろう。









「エリザベート様がお体を悪くして、一年ほど療養で地方に行っていたことがあってね……」



「えっ! そんなにお体が悪かったんですね……今はとってもお元気そうなのに。でも、聖女様が一年も地方に行ってしまって、大丈夫だったんですか?」



「あの頃はまだ先代の聖女様がご存命だったから。でも、聖女様が一年も療養しなければならない大病をしたっていうのに、あまり大騒ぎにはならなかったね。不思議なことに」



「それって……もしかして、病気ではなかったということですか?」



 朧気ながら、私にも記憶があった――母が不在だった時の記憶が。



 そして、カタリナの年齢を考えると、母が不在だった時期と、カタリナが生まれた時期はちょうど重なるのではないだろうか?