頭を上げた私は、そのまま沈黙した。



「難しいか?」 



「その……」



 私だって自分の作った薬が流行り病に効果があるのなら、喜んで薬を作って多くの人の命を救いたい。だが、やはり確信が持てない。



「君の咳止めの薬は……あれは確実に流行り病に効果があります。現に証人がここにいます」



 フィリップの言葉が、私の背中を押した。









 村に戻ると、私たちは今後のことについて話し合った。



 幸いにも、材料となる薬草は、国中どこでも自生していて、容易に収穫することができた。



 しかし、その反面、簡単にいかない事情もあった。それは、薬の作り手がいないということだ。



 レシピ通りに作れば誰でも作ることのできる代物ではなく、それ相応の薬づくりの知識や経験を必要とした。だが、その知識や経験を持っている者自体が、この国にはいなかった。



 今から知識や経験を身に着けさせることは不可能だ――ならば、私がやるしかない。









 国中に薬を配るとなると、作業量が今までの何倍にもなる――作業をするための広い場所や、収穫した薬草を保管しておく場所が必要だ。そして、作業の要となる部分は私がやるとしても、収穫や運搬等の肉体労働においては、どうしても人手がいる。



「この村のみなさんに、手伝っていただくのはどうでしょうか?」



 フィリップが、ふと思い出したように考えを述べた。