「フィリップさんて、本当に下級役人なのかしら……?」



 私はふと疑問を口にした。



「……何か気になることでもありましたか?」



「ええ、ちょっと……」



 この国の下級役人ということは、庶民出のはずだ。



 しかし、フィリップには庶民とは思えない気品があった。フィリップ本人は、庶民に見せようとしていたが、私にはそうは見えなかった。



 私は、次期聖女という立場上、国内外の多くの王族や貴族といった上流階級の人たちを、たくさん見てきた。



 どうもフィリップには、彼らに通ずる雰囲気があったのだ。









 フィリップの訪問があった夜。



 私とメアリが、今日の作業を終え、眠気を感じるようになり、就寝の準備に取り掛かろうとしたまさに時だった。



 ドンドンと激しく扉が叩かれた。



「こんな時間に誰かしら?」



 私が扉を開けると、そこには見知った顔の村人がいた。



「咳止めの薬はあるかい?」



 彼は全速力で走って来たのか、息を切らしながら私に尋ねた。



「ええ、あるわ。ちょうどさっきまで作っていたところだったから」



「ああ、良かった。これでお役人様も助かる」



「病気になったのは、フィリップさんなの!?」



 一気に眠気が消し飛んだ。