「病? それは心配ね。 それで、一体、どんな病なの?」



「何でも……咳が止まらなくなるそうです」



「咳が……?」



 私はしばしの間考え込んだ。心当たりがあったのだ。



「そう言えば最近、咳の薬を貰いに来る人が増えているわ。何か関係があるのかしら?」



「どうでしょうか……? ただ、その流行り病に罹ると、最終的には息ができなくなって亡くなってしまうとのことでした」



「そう、それなら違うかもしれないわね。私はいつもの咳の薬を出しているだけだし、私の薬を飲んだ人たちはすぐに良くなっているもの。別の病気ね、きっと。でも、これから町に行くときは気を付けてね」









 その後、謎の流行り病は全国に広がり、各地で猛威を振るい、多くの死者を出している。



 だが、私の住む村では、誰一人として死者が出ていない。それどころか、症状が出る者もいなかった。



 皆、流行り病のことは知っていたが、田舎の村で、外からあまり人が入って来ないおかげで、流行り病に罹らずに済んでいると考えていた。



 かくいう私も、この村の環境こそが、流行り病の侵入を大きく妨げていると推測していた。









「お嬢さん。森の魔女は今、どちらに?」



 ある日、<森の魔女>に会いたいと、一人の若い男性が、私たちの小屋を訪れた。