「魔女さま、おばあちゃんの薬をもらいに来ました」



「いらっしゃい。はい、どうぞ。気を付けて帰ってね」



 私は、頼まれていた薬を村の子どもに渡すと、その後姿を見送った。



 







 隣国にやって来た私たちは、とある小さな村にたどり着いた。



 この村には、出産のために滞在するつもりであった。あまり人目に付きたくなかった私たちにとって、非常に都合が良かった。



 それに、偶然ではあったが、この村には、数々の薬草が自生している森が隣接しており、偶然にも森の中にある無人の作業小屋を借りることができた。



 そこで、私たちはそこで生活しながら、薬草から作った薬を売って生計を立てることにした。



 村には医者がいなかったため、私の作る薬は重宝された。



 高い効き目から、<魔法のように効く薬>と言われ、その薬を作っている私は、<森の魔女>と呼ばれた。<聖女>として育てられた私が、<魔女>と呼ばれるのは何とも皮肉な話だ。



 だが、自分の知識や技術で誰かを救えることができるのであれば、聖女だろうが魔女だろうが関係ない。



 むしろ、私は、人々の役に立っていると実感できる<魔女>としての現在の生活に満足していた。