「マリア、どうしてここに呼ばれたのかわかっていますか」



 母の第一声を聞いて、私が母に抱いていた淡い期待は裏切られた。



「……いいえ」



 私は、自分から何も言わないことに決めた。これから私が口にすることは、今後の私の運命に大きく関わってくる。



 下手なことを言えば、余計な攻撃材料を与えることになり、更なる窮地に追い込まれることになるのだ。



「そう。それでは仕方ありません」



 母はわざとらしくため息をつき、首を左右に大きく振った。



「あなたが素直に非を認めれば……と考えていましたが、そんな気はなさそうね」









「昨晩、あなたが離れにアベルを招き入れたのを見た人がいます。一体、あなたたちは何をしていたの?」



「あれは薬を分けてあげていただけです!」



 信じてもらえないとわかっていながら、私は無実を主張していた。



「あら、そう……でも、何人もの人間から、アベルがしょっちゅう離れの方角に歩いて行くのを見たと聞いているけど……。あなたに会いに行ったのではないの?」



「それは……」



 言葉に詰まった。そして、母はこの瞬間を待っていたようだ。



「だったら、直接アベルに聞いてみましょう。アベルをここへ呼んできてちょうだい」