私は今日も青空を見ながら登校する。入道雲が主役になっていて、雲の重なり方や交わり方がすごく心を惹きつける。空に見とれていると、学校の校門が見えてきた。

校門に着くと「おはよ! 伊藤!」その元気な声を辿ると、甘い栗色の髪色をした桐山が笑顔で挨拶してきた。

「おはよ!桐山!」と愛嬌を出して挨拶する。それから自分たちのクラスに着くまで会話が続いた。私のクラスは1組で桐山のクラスはその隣の2組だ。クラスが離れて心配だったが、隣だったので少し気がほっとする。

「まじ佐野先生ウザイんだよね」桐山は呆れたように私に言ってきた。どうやら最近国語の先生に怒られたそうで、その愚痴を私は聞いていた。

やっぱり桐山は高校生になっても変わらない。友達も沢山いて、クラスでも盛り上げ役で、勉強もできて、運動神経も抜群だ。そのため、男女共に人気があった。

私は勉強が凄く苦手なので、いつも桐山に教えて貰っていた。桐山を見ているとほっとする。桐山だったらなんでも話せれた。

「じゃあなっ今日も学校頑張れよ!」
「うん! 桐山も頑張ってね」
いつもの一声でお互い教室に入った。
違うクラスだから、この別れる瞬間が少し寂しい........。

あの桐山の一声でもう死んでも悔いわないといつも思う。自分の席に座り、鞄から下敷きを取り出して、少し扇いでいた。すると誰かが教室のドアを開けて私の前の席に座った。

「おっは! 麗華! 私にも扇いで〜」

「おはよ〜! しょうがないな〜」

この陽気な声の持ち主は吉田 愛実(よしだ まなみ)だ。愛実は、入学式の時から意気投合していつも一緒に行動している。愛実は私の前の席なのでいつも授業が始まるまで私に喋ってくれる。

今日の話の内容はずばり、早く彼氏が欲しいと言う話だ。愛実は中学時代に何人か彼氏がいたらしい。ここだけの話だが、私は少しだけ引いてしまった。私が中学生の時には彼氏どころかあまりいい思い出がなかった。

「キーンコーンカーンコーン」

チャイムが鳴って先生が教室に入ってきた。
この時間は学活で、体育祭の話し合いだった。今年は2クラス合同でダンスをするらしい、1組は2組とすることになっていた。桐山のダンスを見れるのは新鮮で楽しみだなと思った。色々と決まった所で、先生は自分の話を語り出した。どうやら先生が学生の時に付き合っていた男の人の話だ。クラスの皆は退屈そうに聞いていた。私も先生の話には興味が無いので、桐山のことを考えていた。

やっぱり桐山にとって私はただの友達なのかな、昔の約束なんて忘れちゃってるよね。それに本気で言ったのかも分からないし........。
だけど私は本気で、絶対に諦めたくない。以前愛実に桐山のことを相談した時の事を思い出した。

「絶対思わせぶりじゃん! せっかく高校生になったんだし、新しい恋見つけてみたら?」

「うーんでもなあ」

少し軽く言われてしまった。確かに諦めたくないと思っていても、諦めざるを得なくなっちゃうのかなと思った。

そんな事を考えていたら前から愛実が話しかけてきた。

「ねね、最近桐山とはどうなの?」

「全然だよー、ほんと何にもないし」

「そか、じゃあさ麗華から桐山に告白すればいいんじゃない?」

「えー、告白は男子からして欲しいよ」

「まあ確かに、でもそんなんじゃいつまでたってもそのままだと思うけどなあ」

「うーん、」

本当は男子から告白して欲しいなんて少ししか考えてない。女子から告白したっていい。でも私は、振られてしまうのが怖いから。もし振られて今の関係が崩れちゃったらどうしようって。

そんな事を考えている内にチャイムが鳴って授業が終わった。そこから淡々と他の授業も終わり、あっという間に放課後になった。