「おい、涼!俺んとこの部活今日無いから前言ってたアイス食べに行くか?」
「…いや俺はいい」
「まだ海辺さんのこと気にしてるん?」
「…そうかもな」
「大体海辺さんは近寄りにくい雰囲気出してるだろ。それに加えて今回の事件なんだから、余計に人は寄り付かなくなるわな」
「……」
「転校は当たり前だ。さっさと元気出せよ〜」
男友達は俺の肩を強めに叩いて去って行く。
桜の事を悪く言うなよ。
その一言が出せない俺は弱虫だ。
あれだけ騒がせた事件は1週間も経てば学生の話題からは消えている。
しかし俺から消えることのない傷だった。
8月24日の夜のニュースで流れた情報。
それは有名な科学者で何度も科学賞を受賞している海辺博貴が安楽死で実験体の人を殺したと言うもの。
その時はまだ夏休みで夕食を食べ終わった俺はリビングでダラダラとしていた。
次の日は母親の実家がある福島に1泊して行く予定で何をしようかと考えていた頃、アナウンサーの言葉で思考が停止してしまう。
俺は他の情報も聞かずに慌ててスマホで桜に電話をかけるが、全く繋がらなく送ったメッセージも既読にならなかった。
このニュースは夏休みの間しばらく大きな話題となって、世間を騒がせる。
「海辺は強制的に実験体を使っていたらしい」
「1人ではなく数人を犠牲にしていた」
「他の研究員には詳しい事は話さずに利用していた」
どれが本当の情報かもわからないものが出回りSNSでは色んな考察が行き来していた。
さらには桜の家の住所も特定されてマスコミ達が殺到。
しばらくの間は桜の家にも近寄れなかった。
9月に入り中旬前の今となっては段々と収まってきて人集りもなくなっている。
一昨日やっと桜の家へ出向くことが出来たけど、インターホンを押しても反応はなかった。
それも当たり前か。
父親は刑務所。
そして桜は転校したのだから。
俺は現実がわかった日から無気力になってしまった。
一応学校には通っている。
それでも決められた事をこなすだけであってそれ以上のことは出来なかった。
桜が居ない。
それだけでここまで落ち込むなんて。
片思いはきっぱり諦めたはず。
でも心の奥底での本心はまだ好きと言う気持ちだった。
元々の諦めの良さが出てくれれば良かったのに。
俺は小さくため息をついて席を立ち上がる。
放課後の教室はほとんどの生徒がもう下校していた。
先程の友達が言った通り部活は休みらしい。
勿論、俺が入っている部活も休みだった。
教室を出ればなぜか桜が居たクラスの方向に体を向けてしまう。
「……」
意外と諦めが悪い方かもしれないな。
俺は頭をガリガリと掻いて、昇降口に向かった。
「…いや俺はいい」
「まだ海辺さんのこと気にしてるん?」
「…そうかもな」
「大体海辺さんは近寄りにくい雰囲気出してるだろ。それに加えて今回の事件なんだから、余計に人は寄り付かなくなるわな」
「……」
「転校は当たり前だ。さっさと元気出せよ〜」
男友達は俺の肩を強めに叩いて去って行く。
桜の事を悪く言うなよ。
その一言が出せない俺は弱虫だ。
あれだけ騒がせた事件は1週間も経てば学生の話題からは消えている。
しかし俺から消えることのない傷だった。
8月24日の夜のニュースで流れた情報。
それは有名な科学者で何度も科学賞を受賞している海辺博貴が安楽死で実験体の人を殺したと言うもの。
その時はまだ夏休みで夕食を食べ終わった俺はリビングでダラダラとしていた。
次の日は母親の実家がある福島に1泊して行く予定で何をしようかと考えていた頃、アナウンサーの言葉で思考が停止してしまう。
俺は他の情報も聞かずに慌ててスマホで桜に電話をかけるが、全く繋がらなく送ったメッセージも既読にならなかった。
このニュースは夏休みの間しばらく大きな話題となって、世間を騒がせる。
「海辺は強制的に実験体を使っていたらしい」
「1人ではなく数人を犠牲にしていた」
「他の研究員には詳しい事は話さずに利用していた」
どれが本当の情報かもわからないものが出回りSNSでは色んな考察が行き来していた。
さらには桜の家の住所も特定されてマスコミ達が殺到。
しばらくの間は桜の家にも近寄れなかった。
9月に入り中旬前の今となっては段々と収まってきて人集りもなくなっている。
一昨日やっと桜の家へ出向くことが出来たけど、インターホンを押しても反応はなかった。
それも当たり前か。
父親は刑務所。
そして桜は転校したのだから。
俺は現実がわかった日から無気力になってしまった。
一応学校には通っている。
それでも決められた事をこなすだけであってそれ以上のことは出来なかった。
桜が居ない。
それだけでここまで落ち込むなんて。
片思いはきっぱり諦めたはず。
でも心の奥底での本心はまだ好きと言う気持ちだった。
元々の諦めの良さが出てくれれば良かったのに。
俺は小さくため息をついて席を立ち上がる。
放課後の教室はほとんどの生徒がもう下校していた。
先程の友達が言った通り部活は休みらしい。
勿論、俺が入っている部活も休みだった。
教室を出ればなぜか桜が居たクラスの方向に体を向けてしまう。
「……」
意外と諦めが悪い方かもしれないな。
俺は頭をガリガリと掻いて、昇降口に向かった。