「なぁ桜!」
「な、何?」
「青春謳歌してるな!」
「はぁ?」
「雨降りの中で走り抜けるって青春の塊だろ!」
「なんで今言うの!」
「今走ってるからだろ!」
雨の音でお互いの声が聞こえにくくなっているため、自然と声量が大きくなってしまう。
でもそれはちゃんと伝え合いたいという証拠だ。
人も歩いていないので私達は構わずに大声で会話する。
「俺もう満足したわ!青春謳歌計画!」
「それは良かったですね!」
「桜と一緒だから楽しい!」
「……またそんなこと言って…」
「何!?」
「うるさい!前見て!転ぶ!」
私は叱るように叫ぶと涼は笑って前を見た。
一応怒ったはずなのに、涼は何だか嬉しそう。
よくわからないなと思いながら絵を抱えて走る。
「駅付近になれば屋根あるから!」
「はぁ、はぁ、り、了解…!」
「大丈夫かー?」
「大丈夫だし!」
「何キレてんだよ」
時々私の方を振り返って笑顔を向ける涼は、言葉通りに青春謳歌を満足しているようだった。
しかしその笑顔は私を困惑させる。
自分自身は青春なんてものを持っているのかと自問自答した。
涼のように日々の生活を充実させたいとか、高校生らしい生活とか、考えたことない。
もし、私の中に涼のような思考があったら…。
また別の道を歩んでいたはずだ。
私の顔に雨では無い液体が流れた気がした。
ーーーーーー
駅前に着くと屋根があったので私達は速度を緩めて走るのをやめる。
雨は本降り近くなっていた。
ゆっくり歩きながら持っている絵を確認する。
「絵は大丈夫」
「良かった」
少し雨で濡れた部分があるけど、乾かせば問題ない程度だ。
駅のホームに入って私は真っ先に椅子に座った。
涼はそのまま歩いて時刻表を確認してくれる。
「…後5分後だな」
「OK」
「とりあえず最寄駅着いても雨がやばかったから傘買うしかないな」
「そうだね」
涼は待ってくれていた画材を椅子に置くと周囲を探索する。
あれだけ走ってもなお動ける体は凄いなと感心した。
何かを探すように顔を近づけたり、しゃがんだりしている。
「何してんの?」
「ちょっと探し物」
「落とした?」
「いや」
駅に着いたばかりなのに何を探しているのだろう。
他に人が居ないから多少変な行動をとっても問題はない。
私は涼から目を離して今も降り続けている雨を見ていた。
「桜」
「何」
「こっち来て」
「涼が来てよ」
「持っていけないから…ほら早く」
「もー何?」
私は走った衝動で疲れている重い体を立たせて涼の所へ行く。
ホームと線路の境目である黄色い線の前で涼はしゃがんでいた。
私は線の内側に立って涼が指さす方向を見る。
そこには花が咲いていた。
薄い色で、沢山の花が集まっている。
花弁は8枚。
ピンク色に染まった花達が雨に打ち付けられていた。
「コスモス…」
「あ、これコスモスなんだ」
「知らないで私を呼んだの?」
「だって特徴が似ていたからさ」
私は改めてまじまじとコスモスを見る。
花弁に付いた雨の雫は1滴ずつ地面へと落ちていく。
「あの人が言っていたのはコスモスだったのかな…?」
青年が最初に思い浮かんだ花。
それは青年しかわからないけど、私からの答えはコスモスだと確定してしまった。
「な、何?」
「青春謳歌してるな!」
「はぁ?」
「雨降りの中で走り抜けるって青春の塊だろ!」
「なんで今言うの!」
「今走ってるからだろ!」
雨の音でお互いの声が聞こえにくくなっているため、自然と声量が大きくなってしまう。
でもそれはちゃんと伝え合いたいという証拠だ。
人も歩いていないので私達は構わずに大声で会話する。
「俺もう満足したわ!青春謳歌計画!」
「それは良かったですね!」
「桜と一緒だから楽しい!」
「……またそんなこと言って…」
「何!?」
「うるさい!前見て!転ぶ!」
私は叱るように叫ぶと涼は笑って前を見た。
一応怒ったはずなのに、涼は何だか嬉しそう。
よくわからないなと思いながら絵を抱えて走る。
「駅付近になれば屋根あるから!」
「はぁ、はぁ、り、了解…!」
「大丈夫かー?」
「大丈夫だし!」
「何キレてんだよ」
時々私の方を振り返って笑顔を向ける涼は、言葉通りに青春謳歌を満足しているようだった。
しかしその笑顔は私を困惑させる。
自分自身は青春なんてものを持っているのかと自問自答した。
涼のように日々の生活を充実させたいとか、高校生らしい生活とか、考えたことない。
もし、私の中に涼のような思考があったら…。
また別の道を歩んでいたはずだ。
私の顔に雨では無い液体が流れた気がした。
ーーーーーー
駅前に着くと屋根があったので私達は速度を緩めて走るのをやめる。
雨は本降り近くなっていた。
ゆっくり歩きながら持っている絵を確認する。
「絵は大丈夫」
「良かった」
少し雨で濡れた部分があるけど、乾かせば問題ない程度だ。
駅のホームに入って私は真っ先に椅子に座った。
涼はそのまま歩いて時刻表を確認してくれる。
「…後5分後だな」
「OK」
「とりあえず最寄駅着いても雨がやばかったから傘買うしかないな」
「そうだね」
涼は待ってくれていた画材を椅子に置くと周囲を探索する。
あれだけ走ってもなお動ける体は凄いなと感心した。
何かを探すように顔を近づけたり、しゃがんだりしている。
「何してんの?」
「ちょっと探し物」
「落とした?」
「いや」
駅に着いたばかりなのに何を探しているのだろう。
他に人が居ないから多少変な行動をとっても問題はない。
私は涼から目を離して今も降り続けている雨を見ていた。
「桜」
「何」
「こっち来て」
「涼が来てよ」
「持っていけないから…ほら早く」
「もー何?」
私は走った衝動で疲れている重い体を立たせて涼の所へ行く。
ホームと線路の境目である黄色い線の前で涼はしゃがんでいた。
私は線の内側に立って涼が指さす方向を見る。
そこには花が咲いていた。
薄い色で、沢山の花が集まっている。
花弁は8枚。
ピンク色に染まった花達が雨に打ち付けられていた。
「コスモス…」
「あ、これコスモスなんだ」
「知らないで私を呼んだの?」
「だって特徴が似ていたからさ」
私は改めてまじまじとコスモスを見る。
花弁に付いた雨の雫は1滴ずつ地面へと落ちていく。
「あの人が言っていたのはコスモスだったのかな…?」
青年が最初に思い浮かんだ花。
それは青年しかわからないけど、私からの答えはコスモスだと確定してしまった。