全ての荷物をバッグに入れて堤防の上から降りる。

そこまで高くは無いけど降りるのに恐怖が出るが、何とか無事降りれた。

画材のバッグを肩にかけると涼がそのバッグを引っ張る。

持ってくれるんだとわかったので私は素直に下ろして涼に渡した。



「ありがとう」

「次は上り坂だから走るなよ」

「さっきは急いでいたけど、今は急いでないから大丈夫」

「これ重いんだからな」

「沢山入ってるからね」



涼の隣に並んで来た道を引き返す。

下れば上り。

それは当たり前な事だけど、最初に走った私の足は結構辛かった。

涼は何ともない顔で歩いているから、ちゃんと運動をしている証拠だろう。

チャンスがあれば運動を始めてみるのもいいかもしれない。

最近お腹周りに肉が付いた気がする。

私は頑張って足を上げながら坂道と戦った。



「どっか寄り道でもするか?」

「涼何か食べた物ある?お礼に奢るよ」

「いや、いい」

「なんでよ。私の気が済まないから」

「好きな人から金は取れねぇよ」

「……」



本当に吹っ切れたみたいに私を好きと言ってくれる。

でも私はその言葉をどう返していいかわからない。

涼は今でも告白の返事を待っているのか。

そう考えるといつまでも答えを出さないのは失礼になる。

しかし自分の気持ちなんてわからない。

だから返事を焦らさない涼に甘えてしまう。

私は色んな人に甘えっぱなしだなと思った。

そういえば才田さんはどうなったのかな。

スマホには通知が来ていないからきっとまだ確定してないのだろう。

あの頼もしい言葉通りになってほしい。

いや、才田さんなら実現させてくれる。

今回ばかりは期待させてほしい。



「あっ」



色んなことを想っていると頬に水が流れる。

もしかして感情的になって泣いてしまったのだろうか。

昨日から泣いてばかりだから涙腺の制御が出来てないのかもしれない。

私は慌てて水を手で拭って目を擦ると涼も同じ声を出す。



「あー、降ってきたわ…」



私は目から手を離して空を見るとポツポツと水が落ちてくる。

また1滴、顔に付いた。

涙ではなく雨だったらしい。



「傘持ってる?」

「持ってねぇ」

「走る?」

「走るか」



涼と私の意見が一致したと同時に走り出す。

まだ完全に降っているわけではない。

でもこれから本降りになるはずだ。

上り坂を走るのはきついけど、雨で絵が濡れてしまったら元も子もない。

一応私に合わせてくれる涼の後ろを追って坂を駆け上がった。