少し息が上がって着いた駅。

私が周りを見て涼を探すと後ろから肩を掴まれる。

誰だかわかっているから安心して後ろを振り返ると、私と同じように息が上がっている涼がいた。



「はぁ、はぁ、行くぞ…」

「ふぅ、了解」



私達の状況を知らない人ならなんだこいつらなんて思われてしまってもおかしくない。

2人して息を切らし、髪がボサボサになっているのだから。

しかしそんなのも気にせず、すぐに来た電車に乗り込んで私達は窓際に立つ。

今は午後だから当然乗っている人は多かった。

押し潰させるように私と涼は人に寄せられる。



「ごめん」

「大丈夫。こればかりはしょうがないから」

「ああ」



涼の顔はほんのり赤い。

それもそうだ。

私のことを好きでいてくれるのだから。

しかしその返事もまだ返していない状況。

昨日家に来た時も、面と向かってその話は出なかった。

まぁお父さんがいたからというのがあるけど。

目の前にいる涼は私が苦しくないようにスペースを腕で空けてくれている。

そういうところは優しいなとは思っているけど、好きの感情なのかはわからなかった。

すると涼の手が私の手に触れる。



「持つ」

「ありがと」



下げていた画材達をそっと持ち上げると私と持つのを交代してくれた。

人が周りにいるので会話は最低限だったけど、涼が前に居てくれるのには安心感がある。

後でお礼をしないと、と私は頭の中で何を奢ろうか考えながら段々と変わってくる景色を見ていた。