まだ帰っている途中なのか、涼からも連絡は来ていない。

私はとりあえずもう1回お礼を言おうとメッセージを打つ。

海の日から止まっていたトークは私からの送信で動き出した。



【今日はありがとう。お父さんも涼のこと褒めていたよ】

【いいよ別に。俺も悪いことしちゃったし】



相変わらず既読と返信は早かった。

私も早い方だけど、涼はもっと早い。

きっと四六時中スマホを片手にしているに違いない。

私はポチポチと文を打って送信。



【もう大丈夫】



涼が言う悪いことは告白の件だろう。

大丈夫と言えるほど、大丈夫では無い。

むしろ今もどうして良いかわからない。

しかしそんなこと言ったら涼が余計に思い詰めてしまいそうだったのであえて言わなかった。



【本当?】

【本当】

【OK】



ちゃんと私の言葉に納得してくれたかは涼しか知らない。

でも文面では納得したようだった。

涼は続けて送信する。



【桜のお父さん、初めて見たけど優しいんだな】



今日がおかしいだけだよ。

そんな事は言えずには私はどう返信しようか迷う。

するとお父さんが台所から帰ってきた。



【ごめん。また後で】

【りょーかい】



私はメッセージアプリを閉じて向かい側のソファに座るお父さんをスマホ越しに見る。

ジッと見つめるよりもスマホという壁があった方が見やすいからだ。

特に変な様子はなく、いつもの無表情。

涼の会話マジックが解けたらしい。

私は表情を伺いながらお父さんに話しかけた。



「あの、お仕事はどうなの?」

「その話も含めて早く帰ってきた」 

「そうなんだ…」

「結局今回はお前に頼りっぱなしになってしまう」

「私は全然良いよ?お父さんの役に立てるなら」

「ありがとうな。……でも、桜。お前は少し父親離れした方がいい」

「えっ?」

「私のために自分の力を使わないでくれ」

「なんで?だってお父さんの頼みだし…」

「今日、和賀那くんに聞けてよかった。桜の話を。しかしちゃんと本題を話す前に聞いたから、心が揺らいでしまった」

「お父さん?」

「思えば私は桜をどこにも連れて行ってあげなかったし、学校行事も参加してあげれなかったな」

「…まぁそうだね」



お父さんはソファに背中をつけてくつろぐろうな姿で話し始める。

やっぱり何かあったんだ。

言われなくても、私は確信に近いものを得てしまった。