海辺さんが運転する車は大きくて白い建物の駐車場に止まった。
シートベルトを外して車を降りる海辺さん。
僕も同じように助手席から降りた。
「こっちだ」
「はい」
案内してくれる海辺さんに着いて行き、建物の中に入ると受付には2人のお姉さんがいる。
綺麗なお辞儀をして迎え入れてくれた。
海辺さんは軽く手を上げてお姉さん達の前を通ると、エレベーターに乗り込む。
僕も置いていかれないように慌てて後を追った。
「もうお母さんとお父さんは来てるんですか…?」
「ああ。既に着いていると連絡があった」
エレベーターの表示が5階になると同時に音が鳴って開く。
スタスタと海辺さんは歩き出す。
すると長い廊下の1部にある扉を開けて後ろを歩く僕に手招きをした。
僕は入り口から顔の覗かせる。
そこには長テーブルの椅子に座っているお母さんとお父さんがいた。
「お母さん!お父さん!」
「ーー…」
「さぁ君はこっちに座りなさい」
駆け寄ろうとしたけど、海辺さんに静止されて僕はお母さん達の向かい側に座る。
その隣には海辺さんが座った。
こんなに長いテーブルなのになぜこの位置なのだろうと疑問に思ったが、どうでもよくなる。
だって会えたのだから。
向かい合ったため、2人の顔がよく見えるが顔色は悪かった。
僕は急に心配になって眉を下げる。
「結論は出せたかい?」
「……ああ」
「勿論、条件は従うさ。一方的に借りるのは良くないことだからね」
「……」
お父さんと海辺さんが僕にはわからない話をし出す。
すると海辺さんがスーツの懐から1枚の紙と万年筆を取り出した。
それをお父さんとお母さんの手元へ差し出す。
「サインを」
なんのサインだろう。
僕は目を凝らして紙の内容を読み取ろうとしたがよく見えない。
お父さんは差し出された紙をジッと見ていた。
海辺さんにサインを書けと言われても手は一向に動かない。
「お父さん…?」
僕がそう声をかけると一瞬肩を震わせ、僕を見た。
釣られてお母さんも僕を見る。
なんでそんな悲しそうな顔をするのだろう。
何を考えているかわからずに首を傾げた。
するとお父さんは僕から目を離してようやく万年筆を待つ。
そんなお父さんを心配する目で見るお母さん。
隣いる海辺さんは最初から表情を変えずに一点だけを見つめていた。
「書いたぞ」
「……確かに受け取った。それじゃあ2人はここで待っていてくれ。少ししたら案内役がくるから、その人について行ってほしい」
「わかった」
「ーーくんは私と一緒に」
「えっ、でも…」
「とても大事な話があるんだ」
先程まで無表情に近い顔だった海辺さんが僕に話しかけた時は少し柔らかい表情になる。
でも言葉には僕の意見を言わせないくらいに力があった。
「ーーくんのお姉さんの話なんだ。お父さん達は今混乱しているから私が代わりに話そう」
お姉ちゃんの話。
僕はその単語が出てきた時点で頷かずにはいられなかった。
しかしそれならば何故車に乗った時点で教えてくれなかった?
もしかしてさっきの紙に関係するのだろうか。
難しい話はわからない。
とりあえず僕は席を立って海辺さんと部屋を出る。
扉を閉める時、お父さんとお母さんの目が僕の姿を捉える。
「またね」
「……ああ、また」
「待ってるね」
僕は軽く手を振ってお父さんとお母さんがいる部屋の扉を閉めた。
シートベルトを外して車を降りる海辺さん。
僕も同じように助手席から降りた。
「こっちだ」
「はい」
案内してくれる海辺さんに着いて行き、建物の中に入ると受付には2人のお姉さんがいる。
綺麗なお辞儀をして迎え入れてくれた。
海辺さんは軽く手を上げてお姉さん達の前を通ると、エレベーターに乗り込む。
僕も置いていかれないように慌てて後を追った。
「もうお母さんとお父さんは来てるんですか…?」
「ああ。既に着いていると連絡があった」
エレベーターの表示が5階になると同時に音が鳴って開く。
スタスタと海辺さんは歩き出す。
すると長い廊下の1部にある扉を開けて後ろを歩く僕に手招きをした。
僕は入り口から顔の覗かせる。
そこには長テーブルの椅子に座っているお母さんとお父さんがいた。
「お母さん!お父さん!」
「ーー…」
「さぁ君はこっちに座りなさい」
駆け寄ろうとしたけど、海辺さんに静止されて僕はお母さん達の向かい側に座る。
その隣には海辺さんが座った。
こんなに長いテーブルなのになぜこの位置なのだろうと疑問に思ったが、どうでもよくなる。
だって会えたのだから。
向かい合ったため、2人の顔がよく見えるが顔色は悪かった。
僕は急に心配になって眉を下げる。
「結論は出せたかい?」
「……ああ」
「勿論、条件は従うさ。一方的に借りるのは良くないことだからね」
「……」
お父さんと海辺さんが僕にはわからない話をし出す。
すると海辺さんがスーツの懐から1枚の紙と万年筆を取り出した。
それをお父さんとお母さんの手元へ差し出す。
「サインを」
なんのサインだろう。
僕は目を凝らして紙の内容を読み取ろうとしたがよく見えない。
お父さんは差し出された紙をジッと見ていた。
海辺さんにサインを書けと言われても手は一向に動かない。
「お父さん…?」
僕がそう声をかけると一瞬肩を震わせ、僕を見た。
釣られてお母さんも僕を見る。
なんでそんな悲しそうな顔をするのだろう。
何を考えているかわからずに首を傾げた。
するとお父さんは僕から目を離してようやく万年筆を待つ。
そんなお父さんを心配する目で見るお母さん。
隣いる海辺さんは最初から表情を変えずに一点だけを見つめていた。
「書いたぞ」
「……確かに受け取った。それじゃあ2人はここで待っていてくれ。少ししたら案内役がくるから、その人について行ってほしい」
「わかった」
「ーーくんは私と一緒に」
「えっ、でも…」
「とても大事な話があるんだ」
先程まで無表情に近い顔だった海辺さんが僕に話しかけた時は少し柔らかい表情になる。
でも言葉には僕の意見を言わせないくらいに力があった。
「ーーくんのお姉さんの話なんだ。お父さん達は今混乱しているから私が代わりに話そう」
お姉ちゃんの話。
僕はその単語が出てきた時点で頷かずにはいられなかった。
しかしそれならば何故車に乗った時点で教えてくれなかった?
もしかしてさっきの紙に関係するのだろうか。
難しい話はわからない。
とりあえず僕は席を立って海辺さんと部屋を出る。
扉を閉める時、お父さんとお母さんの目が僕の姿を捉える。
「またね」
「……ああ、また」
「待ってるね」
僕は軽く手を振ってお父さんとお母さんがいる部屋の扉を閉めた。