豪華な朝ご飯を食べ終えると、僕は海辺さんの後ろをくっ付いてホテルを出る。
海辺さんはもっとゆっくりして良いと言ってくれたのだが、僕は1秒でも早くお父さんとお母さんに会いたかった。
お姉ちゃんの状況を知りたくて。
ホテルを出ると真っ黒な車に乗せられる。
僕は助手席に乗るとまた緊張が走ってしまった。
僕は何回高級を味わうのだろう。
肩に自然と力が入りそうなのを抑えて僕は前を見た。
「それじゃあ出発するよ」
「はい。お願いします」
海辺さんは僕の返事に頷くとすぐに車を発進させる。
車なのに凄く静かなのが印象的だった。
「ーーくんのご両親は病院ではなく別の場所にいる。そこに向かうからね」
「はい。…お姉ちゃんの事って何かわかりますか?」
「生憎、私からは何も言えない。でも安心して欲しい。ご両親は君を待っている」
一瞬だけ僕の方を向いてそう言ってくれた海辺さん。
お母さん達が僕を待ってくれているという嬉しい感情の反面、お姉ちゃんの状態がどんなのかわからない不安が奥底から湧き上がっていた。
車は道路を進んで行く。
平日の朝なので、多少は混んでいる。
それでも海辺さんは安全運転のお手本と言えるくらいに丁寧に走っていた。
ちょっとした信号無視をするお父さんとは大違いだ。
それに運転姿はなんだかカッコいい。
僕の周りにはスーツを着る人がいないからなのか。
ピシッと決まった姿でハンドルを握るのは大人の男性だ。
僕はひっそりと憧れを持ってしまった。
いつか僕も社会に出たらこんな風に乗りこなしてみたい。
サングラスをかけてみたり、洋風の音楽に耳を傾けながら運転してみたり。
妄想は止まらなかった。
「海辺さんはお父さんのお友達なんですか?」
でも今の僕は優雅に程遠い。
静かには耐えられなくて、隣で運転している海辺さんに話しかけた。
僕の急な質問でも海辺さんは答えてくれる。
「友達と言っても親友とは言えないかな。感覚で言えば学校で同じクラスの人間くらいの距離だね」
「そうなんですね」
「ーーくんには親友と呼べる子はいるかい?」
「親友…。居ないですね。その前にそこまで親しい友達は…」
「そうか。失礼な事を聞いてしまった。でもそれも良いかもね」
「友達が居ないことがですか?」
「ああ。だって自分のことだけと向き合えるだろう?結局は友達と言えど他人になる。それに君はもう……」
「え?」
海辺さんの最後の言葉は前の方のクラクションで掻き消される。
「朝は困るね。イライラした人が音を鳴らす。こっちだって朝と言うものを頑張っているのに」
「そうですね…」
僕は最後の言葉を聞かなかった。
視線を斜め前にずらすと制服を着た学生が歩いている。
1人でいる人も、友達といる人も、これから学校に向かうのだ。
海辺さんが大人に任せろと言った意味はよくわからないけど、きっと今日は休むことになると言うのは理解できた。
色んな問題があるが、僕は登校している知らない人達に心の中でマウントをとる。
「今日、僕は学校には行かないんだぞ」と。
海辺さんはもっとゆっくりして良いと言ってくれたのだが、僕は1秒でも早くお父さんとお母さんに会いたかった。
お姉ちゃんの状況を知りたくて。
ホテルを出ると真っ黒な車に乗せられる。
僕は助手席に乗るとまた緊張が走ってしまった。
僕は何回高級を味わうのだろう。
肩に自然と力が入りそうなのを抑えて僕は前を見た。
「それじゃあ出発するよ」
「はい。お願いします」
海辺さんは僕の返事に頷くとすぐに車を発進させる。
車なのに凄く静かなのが印象的だった。
「ーーくんのご両親は病院ではなく別の場所にいる。そこに向かうからね」
「はい。…お姉ちゃんの事って何かわかりますか?」
「生憎、私からは何も言えない。でも安心して欲しい。ご両親は君を待っている」
一瞬だけ僕の方を向いてそう言ってくれた海辺さん。
お母さん達が僕を待ってくれているという嬉しい感情の反面、お姉ちゃんの状態がどんなのかわからない不安が奥底から湧き上がっていた。
車は道路を進んで行く。
平日の朝なので、多少は混んでいる。
それでも海辺さんは安全運転のお手本と言えるくらいに丁寧に走っていた。
ちょっとした信号無視をするお父さんとは大違いだ。
それに運転姿はなんだかカッコいい。
僕の周りにはスーツを着る人がいないからなのか。
ピシッと決まった姿でハンドルを握るのは大人の男性だ。
僕はひっそりと憧れを持ってしまった。
いつか僕も社会に出たらこんな風に乗りこなしてみたい。
サングラスをかけてみたり、洋風の音楽に耳を傾けながら運転してみたり。
妄想は止まらなかった。
「海辺さんはお父さんのお友達なんですか?」
でも今の僕は優雅に程遠い。
静かには耐えられなくて、隣で運転している海辺さんに話しかけた。
僕の急な質問でも海辺さんは答えてくれる。
「友達と言っても親友とは言えないかな。感覚で言えば学校で同じクラスの人間くらいの距離だね」
「そうなんですね」
「ーーくんには親友と呼べる子はいるかい?」
「親友…。居ないですね。その前にそこまで親しい友達は…」
「そうか。失礼な事を聞いてしまった。でもそれも良いかもね」
「友達が居ないことがですか?」
「ああ。だって自分のことだけと向き合えるだろう?結局は友達と言えど他人になる。それに君はもう……」
「え?」
海辺さんの最後の言葉は前の方のクラクションで掻き消される。
「朝は困るね。イライラした人が音を鳴らす。こっちだって朝と言うものを頑張っているのに」
「そうですね…」
僕は最後の言葉を聞かなかった。
視線を斜め前にずらすと制服を着た学生が歩いている。
1人でいる人も、友達といる人も、これから学校に向かうのだ。
海辺さんが大人に任せろと言った意味はよくわからないけど、きっと今日は休むことになると言うのは理解できた。
色んな問題があるが、僕は登校している知らない人達に心の中でマウントをとる。
「今日、僕は学校には行かないんだぞ」と。