連れて来られたホテルはシャンデリアが天井から下がって、周りを見渡せばソファからテーブルまでもが高級だとわかる場所だった。
「こっちだ」
男性は僕の隣を歩いて部屋へ向かう。
「食事はルームサービスを使うといい。後はゆっくり休んでくれ。お父さんには連絡しておくから。明日の朝、部屋に迎えに行くよ」
エレベーターが上昇する。
旅行でホテルに泊まった事は何回かあるけど、こんな高級なホテルは初めてだ。
その前に僕は高級という場所を知らない。
なんだか場違いな気がして肩に力が入る。
目的地に着いた音がすると同時な扉が開くと、男性はもうこの場所を知りきっているように迷わず歩き出した。
「ここが君の部屋だ。今日は色々あっただろう。疲れが取れると良いのだが…」
部屋の鍵を開けると男性は僕を先に中に入れるように横に立つ。
僕は軽く頭を下げて部屋に足を踏み入れた。
「す、凄い…」
「この部屋は夜景が綺麗なんだ。嫌なことも忘れさせてくれるはずだ」
目の前に広がるのは大きな窓の夜景。
そこから見える景色は自分がどれほど高い場所にいるのかわかるくらいに小さかった。
「あの、ありがとうございます…」
「良いんだ。それじゃあ私は失礼する。良い夜を」
僕の右肩をポンと叩くと男性は部屋から出ていく。
色々と不思議な人だなと思った。
僕は靴を脱いで早速大きなベッドに飛びつく。
「なんだこれ…!」
体がゆっくり沈んでまるで僕を包み込んでくれるようだった。
備え付けの枕も肌触りが良くてずっと摩っていられる。
もうこのまま寝てしまおうかと思うが今の自分の格好に気づく。
まだ着替えもしてなかった。
僕は首を振って考えてしまった事を振り払う。
しかし着替えは持ってきてない。
僕は部屋着がないからそこらじゅうのクローゼットや棚の扉を探るとバスローブが出てきた。
こんなの大人になる前に着て良いのだろうか。
でも今は着替えるしかない。
服を脱いでそこら辺にぶん投げると僕はバスローブに腕を通した。
ベッドのように僕を包む優しい感覚。
少し立ったまま余韻に浸っていると、部屋に音が響き渡る。
インターホンが鳴って僕は慌てて部屋の扉へ向かった。
男性が戻ってきたのだろうか。
僕はゆっくり扉を開けるとワゴンと共に来た男性がいた。
「えっ」
「ルームサービスを届けに参りました。それと海辺様からの注文の品もお持ちしました」
「は、はい…」
よくわからず扉を開けるとワゴンを押した男性が入ってくる。
しかし完全に中には入らないで、入り口の手前でお辞儀をするとすぐに去って行った。
僕もお辞儀をして扉を閉める。
ルームサービスなんて頼んで無い。
もしかしたら男性が頼んだのか。
それに海辺様…。
男性の苗字かもしれない。
僕はワゴンを押して部屋の中心まで戻ると、綺麗なテーブルの前に置いた。
蓋がしてあってそれを取ると、僕の目が大きく開く。
「わぁ…!」
サラダ、スープ、パン、そしてステーキが乗せてあった。
何より凄いのはその隣にあるミニケーキ。
上に乗っているチョコには
『ーーくん。誕生日おめでとう!』
とチョコペンで書かれていた。
なんで僕の誕生日を知っているのだろう。
その前に今日が僕の誕生日っていうのがすっかり抜けていた。
嬉しくなって口角が上がる。
僕はこれまた高級な椅子に座り、料理をテーブルに並べる。
「いただきます……お誕生日おめでとう。僕」
美味しい。確かに美味しい。
全てが良い素材を使っているのが丸わかりだ。
でもなんだろう。心は満たされなかった。
お腹も味覚も嗅覚も全てが一流の虜になっている。
それでも心だけは何故か空っぽに感じた。
僕は次々と食べ進めながらも、よくわからない心情に頭を悩ませていた。
「こっちだ」
男性は僕の隣を歩いて部屋へ向かう。
「食事はルームサービスを使うといい。後はゆっくり休んでくれ。お父さんには連絡しておくから。明日の朝、部屋に迎えに行くよ」
エレベーターが上昇する。
旅行でホテルに泊まった事は何回かあるけど、こんな高級なホテルは初めてだ。
その前に僕は高級という場所を知らない。
なんだか場違いな気がして肩に力が入る。
目的地に着いた音がすると同時な扉が開くと、男性はもうこの場所を知りきっているように迷わず歩き出した。
「ここが君の部屋だ。今日は色々あっただろう。疲れが取れると良いのだが…」
部屋の鍵を開けると男性は僕を先に中に入れるように横に立つ。
僕は軽く頭を下げて部屋に足を踏み入れた。
「す、凄い…」
「この部屋は夜景が綺麗なんだ。嫌なことも忘れさせてくれるはずだ」
目の前に広がるのは大きな窓の夜景。
そこから見える景色は自分がどれほど高い場所にいるのかわかるくらいに小さかった。
「あの、ありがとうございます…」
「良いんだ。それじゃあ私は失礼する。良い夜を」
僕の右肩をポンと叩くと男性は部屋から出ていく。
色々と不思議な人だなと思った。
僕は靴を脱いで早速大きなベッドに飛びつく。
「なんだこれ…!」
体がゆっくり沈んでまるで僕を包み込んでくれるようだった。
備え付けの枕も肌触りが良くてずっと摩っていられる。
もうこのまま寝てしまおうかと思うが今の自分の格好に気づく。
まだ着替えもしてなかった。
僕は首を振って考えてしまった事を振り払う。
しかし着替えは持ってきてない。
僕は部屋着がないからそこらじゅうのクローゼットや棚の扉を探るとバスローブが出てきた。
こんなの大人になる前に着て良いのだろうか。
でも今は着替えるしかない。
服を脱いでそこら辺にぶん投げると僕はバスローブに腕を通した。
ベッドのように僕を包む優しい感覚。
少し立ったまま余韻に浸っていると、部屋に音が響き渡る。
インターホンが鳴って僕は慌てて部屋の扉へ向かった。
男性が戻ってきたのだろうか。
僕はゆっくり扉を開けるとワゴンと共に来た男性がいた。
「えっ」
「ルームサービスを届けに参りました。それと海辺様からの注文の品もお持ちしました」
「は、はい…」
よくわからず扉を開けるとワゴンを押した男性が入ってくる。
しかし完全に中には入らないで、入り口の手前でお辞儀をするとすぐに去って行った。
僕もお辞儀をして扉を閉める。
ルームサービスなんて頼んで無い。
もしかしたら男性が頼んだのか。
それに海辺様…。
男性の苗字かもしれない。
僕はワゴンを押して部屋の中心まで戻ると、綺麗なテーブルの前に置いた。
蓋がしてあってそれを取ると、僕の目が大きく開く。
「わぁ…!」
サラダ、スープ、パン、そしてステーキが乗せてあった。
何より凄いのはその隣にあるミニケーキ。
上に乗っているチョコには
『ーーくん。誕生日おめでとう!』
とチョコペンで書かれていた。
なんで僕の誕生日を知っているのだろう。
その前に今日が僕の誕生日っていうのがすっかり抜けていた。
嬉しくなって口角が上がる。
僕はこれまた高級な椅子に座り、料理をテーブルに並べる。
「いただきます……お誕生日おめでとう。僕」
美味しい。確かに美味しい。
全てが良い素材を使っているのが丸わかりだ。
でもなんだろう。心は満たされなかった。
お腹も味覚も嗅覚も全てが一流の虜になっている。
それでも心だけは何故か空っぽに感じた。
僕は次々と食べ進めながらも、よくわからない心情に頭を悩ませていた。