【完結】君は僕のストーリーテラー

「今日の夕飯は出前を取ろう。食べたい物があれば言いなさい」

「んー、お寿司」

「わかった。それと午後はどうするつもりだ?」

「どうするって言われても……部屋でゴロゴロ?」

「買い物とかは行かないのか」

「行く予定はない」

「そうか…」



もしかしてこれは欲しい物を買ってもらえるチャンスだったのでは?

でも今更行くなんて言えないし、生憎欲しい物がない。

物欲が少ない私は頻繁には買い物に行かないタイプだ。

どちらかと言うと食べ物にお金を使いたかった。

でも今日の夜はお寿司。

流石に何処かに食べに行こうとは思えないし、言えなかった。

私は次の作業を始めたお父さんを見て自分の部屋に戻る。

学校のカバンをドサッと置いて制服から私服に着替えると机に向かうことなくベッドへ横になった。

スマホを持っていじっていると涼からLINEが届く。



【青春謳歌しない?】

【またその話?】

【スイーツ巡り行きたい人〜】

【………】

【じゃあいいよ】

【拗ねるな拗ねるな】

【海行かない?】

【また急に変わったね】

【俺は海の家で食べて、桜は風景画を描く!どう!?】



メッセージを見て私は海を思い浮かべる。

何気に海は描いたことない。

別に涼と行っても放っておいて私は1人でゆっくり描くのも良いかもな。

私は涼に返信した。



【いいよ】

【よし!他誘いたい人いる?】

【私はたぶん行っても1人で描くと思う】

【桜は俺と2人でもいい?】

【別にいいよ】

【なら後で日程決めよう!俺今から昼飯だから!】

【さっきクレープ食べたよね?】

【おやつだろ】



涼はバイバイとクマが手を振るスタンプを送る。

私はそれに既読をつけてスマホを消した。

海に行くのは私にとって初めての経験だ。

実際にこの目で見たことはない。

情報として本やテレビでは見た。

小さい頃からお父さんには何処にも連れて行ってもらってないし、遠出すると言えば学校の遠足くらいだ。

苗字が『海辺』の癖して海には縁がない。

涼からの誘いだったけど、何気に私の心は弾んでいた。

海に行く前に画材を揃えておこう。

でもとりあえず今は昼寝をしようとスマホを横に置いて目を瞑った。