「出来た…!」



絵を描かない初心者には5輪が限界。

それでも最初よりは上手く描けているし、何よりコスモスだとわかる。

ゲームをやる予定をそっちのけで描いていたがとても楽しかった。

お姉ちゃんに見てもらおうと思って、チラシと本を持ってリビングから出る。

リズミカルに階段を登るとお姉ちゃんの部屋に直行した。

部屋をノックしてお姉ちゃんの返事を待つ。

すぐに返事が返ってきて僕は扉を開けた。



「お姉ちゃん、見て」

「ん?何……」

「お姉ちゃん!?」



ベッドの横に座っていたお姉ちゃんが立ち上がった瞬間、ふらついて斜め前に倒れる。

間一髪、顔が床に当たるのは避けられたけど、僕は一瞬でパニックになってしまった。



「お姉ちゃん!大丈夫!?」

「あ……」



苦しそうな表情で僕の服を掴んで耐え始めるお姉ちゃん。

すると次の瞬間、お姉ちゃんの口から赤い花弁が散った。

その花弁は僕の手に付いて生暖かく滴る。

何も考えられなくなってしまった。

次々と花弁は散っていく。

僕が書いたコスモスは真っ赤になって見えなくなってしまう。

僕はその光景にハッとして涙を流したながらお母さんとお父さんを呼んだ。



「お母さん!!!お父さん!!!」

「うぁ、、ゲホッ」

「誰か!!誰か!!」



声変わりで低くなりつつある喉が痛くなっても僕は声を出し続けた。

いつも守ってくれるお姉ちゃんが死んでしまうと思った。

そしたれ僕を1番近くで守ってくれる人がいなくなってしまう。

怖い。

僕は腕の中で横たわっているお姉ちゃんに声をかけながら抱きしめる。

また服を掴む力が弱まった気がした。