突然の目眩と頭痛に襲われる。

空間が揺らぎ、僕を頭から壊そうとされて世界の、いや僕の終わりだと思った。

苦しんで助けを求めたくても口から出るのは言葉ではなく悲鳴のような声。

段々と自分が何を考えているのかもわからなくなった。

床に転がり手足を激しく動かしながら僕はもがき叫ぶ。こんなに騒いでも誰も助けには来てくれない。

ずっと1人で苦しむのだろう。

確信に近い予想は僕が余計に叫ぶ材料となった。



「ああ!あああ、あーー!」



苦しい。

今までこんな事なかった。それなのに急にだ。

長い間時間苦しみと闘うのならいっそ死んでしまいたい。

誰か僕を殺してくれないか?

そんな事願ったって誰も助けに来てくれない。

今は何時だ?今は何日だ?点滴は変えに来ないのか?

桜ちゃんは話に来ないのか?居るんだろ?

この部屋の外に誰か居るんだろ…?

何で誰も来てくれないんだよ。



「うぁ、、ああ…、ううう」



もう無理だ。

助けが来ないのなら自分から行くしかない。

僕は床に這いつくばりながらどっちの方向を歩いているかもわからずに進み出す。

涙が僕の通った道を濡らしていた。

繋がっている点滴の管が邪魔くさい。

でもこれを取ったらもっと辛くなってしまうと思えば気軽に取れなかった。

点滴も、体も引きずりながら僕は進む。



『残念ながらいない』



『海を連れてきます』



最近聞いた言葉が頭の中で回る。

なんで思い出したんだろう。

僕は自分に鞭を打つように動きながら考える。

冷たい言葉と暖かい言葉。

呼吸が荒くなって余計に涙が溢れ出る。



『これ、今日描いた絵です。貰ってください』



そういえば桜ちゃんって白衣の人達よりも後に出会ったんだよね。

今の状態では全く関係ない話。

それでも僕の脳は桜ちゃんの言葉と顔を映し出す。

でも浮かぶ種類が増えると比例して頭痛が僕を本気で壊そうとしてくる。

目の前が霞み始めても震える腕と足を使って助けを求めに行く。



『私は、海辺…』



しかし痛みを増す頭痛には勝てずに僕はうつ伏せで倒れ込む。

扉の方向はこっちで合っているのか。

もし反対方向に向かっていたらどうしよう。

僕はもう一度立ち上がって動かす体力も気力も尽きていた。



「死ぬ………?」



誰かに放った言葉じゃない。

自分自身に問いかける。

僕の体なのだからわかるはずだろう。

生きれるか、死ぬかなんて。

でも返事は返って来なかった。

その代わり、瞼が落ちてくる。



「は、はは」



もしかしたら解放されるのかも。

逆にそう思えて嬉しくなる。

でも僕が解放されたら困る人が居るのかな?

白衣の人達は死んだら泣いてくれるかな?



「いっ!」



馬鹿な考えはやめろと言わんばかりに先程より強烈な頭痛が襲ってくる。

僕の瞼は完全に閉じようとしていた。

次、目が覚める時はすぐに来るのだろうか。

ひとまず今は全部自分に委ねて寝よう。

でも、でも最後に、、頭の中で白くモヤがかかっている人の顔を見させて……。