【完結】君は僕のストーリーテラー

帰り道は家とは別方向に向かう。

それは帰り道というよりも寄り道になってしまうが。

私は海に持って行く用の画材を揃えたかった。

後で後でと思って1学期中遠回しにしたおかげで一気に今日買うことになる。

金欠までとはいかないけど、お店に滞在する時間が長くなってしまうはずだ。

さっさと買ってさっさと帰りたいけど、自業自得。

私はお店へと足を運ぶ。

が、足が止まった。

私は隣に建っている書店の目の前で考える。

あの青年に何か本を持って行ったら会話の話題になるのではないか。

画材よりもこっちが優先だ。

そう思って書店の扉を開いた。



「いらっしゃいませー」



店員さんの声と共に涼しい風が私の体を冷やしてくれる。

ずっと暑い外に居たからここは天国に感じた。

立ってぼーっとしていたいけど、迷惑になるのですぐに歩き出す。

何の本が良いのだろう。

流石に小説は読むのに時間がかかる。

パッと見てすぐに話せるものが理想だ。

私は小説コーナーや漫画コーナーを無視して奥に進む。

ここも違う、これも違うと歩いていれば小さい子用の本コーナーまでやってきてしまった。

流石に絵本はなぁ、と思い見ていると分厚い本を見つける。



「図鑑…」



花、動物、海の生き物などが多く載っている本。

私は手に取ろうと伸ばしたがすぐに方向を変えた。

手に取ったのは塗り絵。

図鑑の隣に置いてあった、簡単な塗り絵だ。

これなら2人で出来るのではないだろうか。

少しなら私だって教えてあげられる。

私が色鉛筆とか絵の具を持っていけば成り立つ話。

図鑑よりもこっちの方がよっぽど良い気がした。

私は簡単な塗り絵を2冊買う。

レジの人はきっと弟や妹に買うんだろうなと思っているかもしれない。

実際は私よりもたぶん年上の青年に贈るものなのだが。

塗り絵は安いし、何より小さい子用なので無駄な出費にはならない額で手に入った。

私は涼しい書店から出て隣にある本来の目的のお店へ入る。

ついでに色鉛筆も1つくらい買っても良いかもな。

私は海に持って行く用の画材はそっちのけで青年と描く色鉛筆を探し始めた。