次に目覚めた時の体勢は横になって寝ていた。
いつの間に動いたんだろうと思う。
僕はどれくらい寝ていた?
体を起こして点滴を見ると半分くらい減っている。
僕はまだぼんやりとしている頭を軽く振って目を覚ます。
前髪が伸びてきて鬱陶しい。
後ろ側の髪の毛も跳ねていてボサボサだ。
またいつもの体育座りに戻る。
今日は何をされるのだろう。
少し外の方から話し声が聞こえる。
何を喋っているのかは理解できないけど、人がいるのは確かだ。
僕を見張っているのか。
それとも次の実験を始めるのか。
どちらにせよ気分が悪い。
逃げ出したいのに逃げ出せないこの空間が嫌になる。
僕は頭を掻いていると扉が開いた。
点滴はさっき交換しただろう?
口には出さないけど僕は心の中で嫌味を言う。
すると入ってきた人は僕の隣に座って顔を覗き込んだ。
「こんにちは」
「…えっ」
優しい声が聞こえて思わず頭を上げる。
なんでまた来たんだ?
いや、来るとは言ってたし僕も来て欲しいみたいな行動はとったけど早すぎないか?
点滴は変えてから半分しか減ってない。
わからなくなって目を見つめていると、優しい声はまた僕に語りかけた。
「私の名前覚えてますかね?」
知ってるよ。
久しぶりに名乗られたのだから。
僕は名乗り返せなかったけど。
「さくら、ちゃん」
また掠れる声と途切れる言葉。
ちゃんと話したくても舌と喉がおかしい。
日常的に話すことは大切なことだと思った。
僕の言葉を聞いた桜ちゃんは誰にでもわかるくらい嬉しそうな表情をする。
まるで花が咲いたようだった。
名前の通り君は桜の花なのだろうか。
それとも君は妖精か?
人間の形をした精霊か?
おかしな思考になる僕を見る桜ちゃんは笑顔で何かを取り出した。
「私の名前の漢字を教えますね」
カバンから出したのは大きなメモ帳とペン。
桜ちゃんはそこに自分の名前をスラスラと書いた。
【海辺 桜】
「漢字…読めますか?」
「…うん」
海と桜の単語が入ってるなんて凄いなと思う。
季節は別々だけど、どれも綺麗なものだ。
僕は桜ちゃんの漢字を覚える。
「海辺っていう苗字は日本では500人くらいらしいです。桜は結構多いと思いますけど…」
「…うん」
「でも名前に関してはお父さんに何も聞いてないんです。どんな理由だったとか。誕生日は5月だから桜シーズンは終わってるので、季節は違うかなって思ってます」
「お父さんが、桜、好き、とか…」
「その可能性はありますね。今度聞いてみます」
「…うん」
なんだか楽しい。まだ一言二言しか喋ってないのに。
白衣を着た人達と関わるのは苦しい。
でも桜ちゃんと話すのは楽しく感じる。
久しぶりの会話相手だからかな。
それに桜ちゃんは僕の目を見てくれる。
それもわざわざ座って。
あの人達とは大違いだ。
僕を人として見てくれている。
それが楽しいと合わさり、嬉しいになった。
「あの、好きな花とかありますか?」
「花…?」
「はい。私は薔薇が好きです。なんだか持つと大人って感じがしません?薔薇が似合う人って素敵だと思います」
「僕は…」
頭の中で花を考える。
どれが好きだと言われてもわからない。
それでも1番最初に浮かんだ花があった。
しかしその花の名前が思い出せない。
「薄い色で、いっぱい咲いている花…」
「薄い色?」
「名前がわからない」
「他の特徴とかありますか?」
「…花びらが少し多い」
「んー」
「木じゃなくて地面に咲いてる花…」
「なんだろう」
桜ちゃんは持っていたメモ帳に絵を描く。
僕が言った特徴で描いているみたいだ。
出来上がったらしくメモ帳を僕に向けてくれる。
「綺麗…」
「こんな感じですか?」
「…違うかな」
「なるけど」
本当にこの短時間で描いたのかと思うほど綺麗だった。
普通に同じ形の花びらを描くだけの絵ではない。
僕はまた描き始めた桜ちゃんの絵を見るために近づいた。
いつの間に動いたんだろうと思う。
僕はどれくらい寝ていた?
体を起こして点滴を見ると半分くらい減っている。
僕はまだぼんやりとしている頭を軽く振って目を覚ます。
前髪が伸びてきて鬱陶しい。
後ろ側の髪の毛も跳ねていてボサボサだ。
またいつもの体育座りに戻る。
今日は何をされるのだろう。
少し外の方から話し声が聞こえる。
何を喋っているのかは理解できないけど、人がいるのは確かだ。
僕を見張っているのか。
それとも次の実験を始めるのか。
どちらにせよ気分が悪い。
逃げ出したいのに逃げ出せないこの空間が嫌になる。
僕は頭を掻いていると扉が開いた。
点滴はさっき交換しただろう?
口には出さないけど僕は心の中で嫌味を言う。
すると入ってきた人は僕の隣に座って顔を覗き込んだ。
「こんにちは」
「…えっ」
優しい声が聞こえて思わず頭を上げる。
なんでまた来たんだ?
いや、来るとは言ってたし僕も来て欲しいみたいな行動はとったけど早すぎないか?
点滴は変えてから半分しか減ってない。
わからなくなって目を見つめていると、優しい声はまた僕に語りかけた。
「私の名前覚えてますかね?」
知ってるよ。
久しぶりに名乗られたのだから。
僕は名乗り返せなかったけど。
「さくら、ちゃん」
また掠れる声と途切れる言葉。
ちゃんと話したくても舌と喉がおかしい。
日常的に話すことは大切なことだと思った。
僕の言葉を聞いた桜ちゃんは誰にでもわかるくらい嬉しそうな表情をする。
まるで花が咲いたようだった。
名前の通り君は桜の花なのだろうか。
それとも君は妖精か?
人間の形をした精霊か?
おかしな思考になる僕を見る桜ちゃんは笑顔で何かを取り出した。
「私の名前の漢字を教えますね」
カバンから出したのは大きなメモ帳とペン。
桜ちゃんはそこに自分の名前をスラスラと書いた。
【海辺 桜】
「漢字…読めますか?」
「…うん」
海と桜の単語が入ってるなんて凄いなと思う。
季節は別々だけど、どれも綺麗なものだ。
僕は桜ちゃんの漢字を覚える。
「海辺っていう苗字は日本では500人くらいらしいです。桜は結構多いと思いますけど…」
「…うん」
「でも名前に関してはお父さんに何も聞いてないんです。どんな理由だったとか。誕生日は5月だから桜シーズンは終わってるので、季節は違うかなって思ってます」
「お父さんが、桜、好き、とか…」
「その可能性はありますね。今度聞いてみます」
「…うん」
なんだか楽しい。まだ一言二言しか喋ってないのに。
白衣を着た人達と関わるのは苦しい。
でも桜ちゃんと話すのは楽しく感じる。
久しぶりの会話相手だからかな。
それに桜ちゃんは僕の目を見てくれる。
それもわざわざ座って。
あの人達とは大違いだ。
僕を人として見てくれている。
それが楽しいと合わさり、嬉しいになった。
「あの、好きな花とかありますか?」
「花…?」
「はい。私は薔薇が好きです。なんだか持つと大人って感じがしません?薔薇が似合う人って素敵だと思います」
「僕は…」
頭の中で花を考える。
どれが好きだと言われてもわからない。
それでも1番最初に浮かんだ花があった。
しかしその花の名前が思い出せない。
「薄い色で、いっぱい咲いている花…」
「薄い色?」
「名前がわからない」
「他の特徴とかありますか?」
「…花びらが少し多い」
「んー」
「木じゃなくて地面に咲いてる花…」
「なんだろう」
桜ちゃんは持っていたメモ帳に絵を描く。
僕が言った特徴で描いているみたいだ。
出来上がったらしくメモ帳を僕に向けてくれる。
「綺麗…」
「こんな感じですか?」
「…違うかな」
「なるけど」
本当にこの短時間で描いたのかと思うほど綺麗だった。
普通に同じ形の花びらを描くだけの絵ではない。
僕はまた描き始めた桜ちゃんの絵を見るために近づいた。