「瑞々しい文章から、筆者の鋭敏な感性が滲み出ている、だって」
「僕の負けだね」
すると美月が、憤慨して言った。
「別に勝負なんてしてない。それに、他の作品も読んでみたいと書いてある。今回送った小説だけを評価してくれたわけじゃない」
美月が必死になって反論するので、僕はおかしくなってしまう。
「うん、そうだね」
僕が笑ったから、ようやく美月は安堵したようだった。
「護のおかげだ」
「僕は送っただけだよ。それより今度、お祝いしよう。何か欲しいものある?」
「お祝いと言うより、打ち上げがしたい」
美月は少しばかり恥ずかしそうにして、付け加える。
「ほら、体育祭とか文化祭の後にするんだろ?」
「じゃあ来週の金曜日に。旦那様の帰り、遅いよね?」
「あぁ、多分」
受賞の知らせを聞いたときより、美月は嬉しそうに笑った。
約束の金曜日、僕は学校が終わってすぐ屋敷へ急いだ。いつもなら真っ先に美月の部屋に行くが、今日は厨房へ向かう。
「用意、してくれました?」
コックに声を掛けると、彼はにやりと笑って言った。
「あぁ。苦労したぞ」
小さなトレーの上には、冷えたコーラの缶と紙コップ、そして揚げたてのフライドポテトがのっている。
「あの執事が、よく許しましたね」
「豚肉のコーラ煮を作ると言ったからな。……あんまり羽目、外すなよ」
「わかってます」
僕は礼を言って頭を下げた。隠すようにトレーを抱え、美月の部屋に急ぐ。
コンコンコン。扉をノックすると、待ちきれない様子で美月が扉を開けた。
「ぅわ、すごい」
感嘆の声は嬉しいが、執事に気づかれると困る。僕は慌てて彼女を部屋に押し込め、扉を閉めた。
「おまたせ」
「信じられない。本当に打ち上げみたいだ」
「喜んでもらえて嬉しいよ」
テーブルにトレーを置き、紙コップにコーラを注ぐ。美月はキラキラとした目で、僕の動作のひとつひとつを見つめている。
「乾杯、しようか」
「うん」
幼い子どもみたいに、美月はうなずいた。僕と彼女は向かい合わせに座り、紙コップを軽くふれ合わせる。
「作家、相良美月の誕生に」
「あぁそうか、そうだったな」
美月はこれが何の祝いか、わかってないみたいに言った。
「僕の負けだね」
すると美月が、憤慨して言った。
「別に勝負なんてしてない。それに、他の作品も読んでみたいと書いてある。今回送った小説だけを評価してくれたわけじゃない」
美月が必死になって反論するので、僕はおかしくなってしまう。
「うん、そうだね」
僕が笑ったから、ようやく美月は安堵したようだった。
「護のおかげだ」
「僕は送っただけだよ。それより今度、お祝いしよう。何か欲しいものある?」
「お祝いと言うより、打ち上げがしたい」
美月は少しばかり恥ずかしそうにして、付け加える。
「ほら、体育祭とか文化祭の後にするんだろ?」
「じゃあ来週の金曜日に。旦那様の帰り、遅いよね?」
「あぁ、多分」
受賞の知らせを聞いたときより、美月は嬉しそうに笑った。
約束の金曜日、僕は学校が終わってすぐ屋敷へ急いだ。いつもなら真っ先に美月の部屋に行くが、今日は厨房へ向かう。
「用意、してくれました?」
コックに声を掛けると、彼はにやりと笑って言った。
「あぁ。苦労したぞ」
小さなトレーの上には、冷えたコーラの缶と紙コップ、そして揚げたてのフライドポテトがのっている。
「あの執事が、よく許しましたね」
「豚肉のコーラ煮を作ると言ったからな。……あんまり羽目、外すなよ」
「わかってます」
僕は礼を言って頭を下げた。隠すようにトレーを抱え、美月の部屋に急ぐ。
コンコンコン。扉をノックすると、待ちきれない様子で美月が扉を開けた。
「ぅわ、すごい」
感嘆の声は嬉しいが、執事に気づかれると困る。僕は慌てて彼女を部屋に押し込め、扉を閉めた。
「おまたせ」
「信じられない。本当に打ち上げみたいだ」
「喜んでもらえて嬉しいよ」
テーブルにトレーを置き、紙コップにコーラを注ぐ。美月はキラキラとした目で、僕の動作のひとつひとつを見つめている。
「乾杯、しようか」
「うん」
幼い子どもみたいに、美月はうなずいた。僕と彼女は向かい合わせに座り、紙コップを軽くふれ合わせる。
「作家、相良美月の誕生に」
「あぁそうか、そうだったな」
美月はこれが何の祝いか、わかってないみたいに言った。