ルーベルトの言葉で映像が消える
オフィールの民は歓喜に溢れ、ルイヒの者は王女と宰相なのだと思い知る
その中にも疑う者も居る。
嘘だ、偽りだ、何かの問題だ
力の扱えない、
アイツが王女の訳がない!
怒り、憎しみが溢れスピカを受け入れないルイヒの子供達だった。
即位式が予定通り終わり、スピカとルーベルトはセバスチャンに誘導させられ出て行くと謁見の間がざわめく
「王女様と宰相様を見た?
あんな神秘的なお姿」
「あのお髪、光輝いていて、姿は光なのにお髪は夜空のような」
「その逆に宰相様はお昼の様に眩しい太陽のようだ」
神秘的
六人の騎士団長は悲しそうに眺めてる
「どうしたキース」
一人の光の騎士が聞く
「何がだ」
「何か思い詰めた顔してるぞ、団長達全員が」
キースは彼を見る
彼はルフレに上がった際からの友人として、兄弟の様に過ごし、生活していたから、彼を誤魔化しは聞かないし、自分が団長となった時も補佐として副団長として務めてる
「まだ十歳のお子だ、親から引き離したから、心を開いてくれるか、心配なんだ」
スピカは愛犬イータとペンダントが唯一の慰めになってるだろうが、ルーベルトには本当に何も無い。
それにスピカとルーベルトは友人ではないし、スピカの友人が居そうには思えない
五年後スピカは女王になる
それまでに信頼を得てオフィールを守らないといけないのだ。
スピカはあの部屋に向かうとスーザンとアメリアが飾りを外しアーノルドはルーベルトを連れて行き、セバスチャンはスピカの私室へ送り、スーザンに任せる
セバスチャンは息を吐き出す
長年主の居なかった城内、使用人達も神子達、騎士団も決まった仕事のみの執務
そして神官長からの手紙
皆を集める
「執事長」
「神官長からの連絡があり、明日、王女様と宰相様が来られます」
皆がセバスチャンを見る
「王女様、宰相様?」
「十歳の儀式で王女様と宰相様が現れました。
明日ルフレに来ます」
皆が驚く
「アーノルドと、ジェイソン、王女様と宰相様の執事に、スーザンとアメリアが使用人に」
セバスチャンが答える
自分は執事長として支える事にした
アーノルドとジェイソンは若いがお二人に近い為に、王女様と宰相様も安心するだろう
「いいえ、私は無理です
執事長が王女様の執事に、執事長は主人の執事ですから」
ジェイソンが言う
セバスチャンは固まる
自分は裏で支えようと考えた
確かに執事長は主人、王を支える執事
『セバスチャン、お前を執事長にする』
先代から言われた
神子にも騎士団にもなれなかった自分
『私は執事長には』
『いや、お前だから執事長になれる
力をマハトを恐れるな、これはアルズのお告げだセバスチャン』
お告げ
セバスチャンは力を恐れてる
セバスチャンの力はそれほど強く無い
騎士団や神子長より弱いだろう
しかし火の力の為か威力が強過ぎて、コントロールが出来ず、自分や周りの者まで火傷をさせて、力を封じて生きて来た。
『セバスチャン、お前のマハトは、必ず主を守る』
先輩
「わかった、王女は私が務める
時間がない、各自王女様と宰相様の部屋の確認、警備、貴重品の確認」
「「はい」」
皆が動く
夜遅くまで働き、朝
「王女様は愛犬をお連れになる
大型犬で、足に怪我をしてる!」
「解りました、クッションの支度を」
音が鳴る
「来られた」
セバスチャンは左腕を掴む
ジュリウスとマリウスが来られた。
「王女様と宰相様が参りました、ご挨拶を」
「はい、参りましょう」
二人に付き従う四人
長年居なかった主、自分達の世代で会えるとは
そして入口で人目で見た自分達の主
愛犬に縋り、脅える子供
彼女が王女
彼女を見て理解した自分はこの子に、いやこの方に出会う為に生きて来たと
『セバスチャン、ルフレへいけ、それがお前の使命だ』
『頼んだぞ、セバスチャン』
貴女に忠誠を
「王女様の執務をサポートさせていただきます
執事のセバスチャンです」
即位式が終わり、飾りを外されていくスピカを見て、スーザンに任せて離れる
たった三日
主の為に支度し、主を迎えて、主の即位式
それだけでルフレは活気付き、明るくなり、忙しく動き回る
自分もまた王の居ないルフレで務めを終えると思っていたのに
スーザンが出て来た
王女が休まれたのだろう
セバスチャンは右腕を掴み、痛みに堪える
「執事長」
「大丈夫、騒ぐな」
セバスチャンは放れ、傷薬を飲み息を吐き出す
責めて王女様が落ち着くまでは堪えないと
壁に寄りかかる
王女様を視てると全てが満たされ、この痛みすら薄れる。
スーザンはスピカを休ませ、部屋を出ると柱に隠れ、痛みに堪えるセバスチャンを見る
セバスチャンは他者から一線を引く
それは使用人、執事達皆が知る事
昔、マハトの暴走で自分と先輩に火傷を負わせた。
その傷を一人で背負う彼
スーザンはセバスチャンに近寄る
「王女様がお疲れで休めました。」
「解りました、スーザンも休みなさい」
セバスチャンは料理人に頼み、軽食を持っていくとスピカはルーフバルコニーのイスで眠っていた。
セバスチャンはスピカをベッドに運び寝かせる。
セバスチャンは静かに立ち去る
スピカはスーザンが立ち去るとイータとルーフバルコニーに出て、イスに座り庭を眺める。
この部屋は何代のも王女が来て過ごされたのだろか?
そして五年後、女王となり、また別の部屋へ移動するのだろう
スピカが瞳を閉じると無の空間に男性が立っていた。
「貴方は」
男性はスピカを見る
「君の前任者と言うべきかな、前王、二百年前の王だった」
前王、二百年前の王
スピカは男性を見る
二百年前の王が何故?
前王もまたスピカを見る。
「王とはルフレに守られ、オフィールを守る、私が二百年このオフィールを守ってきた、新たな女王よ」
二百年前、オフィールを守ってきた前王
スピカは寝覚めるとベッドで眠っていた
かなりの時間が流れたのだろう、外は夕暮れ
体を起こすと軽食が置かれてあり、まだ温かい
『準備が良い』
スピカはテーブルに近寄り食事をする
『美味しい』
ルフレに来て二日目、ルーベルトは即位式が終わり、アーノルドにより私室に戻ると少しイスで休み、疲れがどっと来る
王を支えし宰相の存在、王の傍らに寄り添う自分
傍らに居たいと願う寄り添いと
「スピカ様」
彼女を呼ぶだけで、心が満たされる
星のような彼女の存在、淡い彼女に寄り添いたい
自分の部屋とスピカ様の私室は放れてる
代々宰相はこう思って居たのだろうか?
それとも自分がスピカ様を求め過ぎてるのだろうか
ルーベルトは宰相としての王への感情に戸惑うのだった
ルフレの使用人達は昔から前任から言われ伝えられて居た
『即位式が終えた王子、王女に眠りの時間を、宰相に一人の時間を』
ルーベルトを見守りアーノルドとアメリアはそっと放れる
アーノルドとアメリアは宰相の執事と使用人になった事は自分達の誇りだ。
アーノルドとアメリアは親に捨てられ二人で支え生きて来た。
その中神子達により、執事、使用人になり暮らしてきた
セバスチャン、スーザン、ジェイソンなどに支えられ学び、地位を固めてきた。
ルフレに仕える者達は問題が多く皆が支える
家族や兄弟のように
アーノルドとアメリアに帰る場所が無い
やってきた宰相の執事と使用人になった
スピカはイータを連れて部屋を出てルーフバルコニーに階段があり、それを降りると庭に出て行く
夕暮れに輝く庭を眺めて歩む
即位式が終わり、挨拶を終えたジュリウスがスピカを見付け、騎士団達を止め、自らスピカの護衛する事にした。
王女として即位させたが、心も知識も幼い、明日から力の訓練が始まる
今まで力を扱ってこなかったから不安もあるに違いない
それに前王が居たのは二百年も前の事、見本となる存在が居ない
陽が沈む
ジュリウスがスピカに近寄る
「王女様、部屋に戻りましょう」
スピカは肩を揺らし振り返るとジュリウスが居て一息する
「居たの?」
スピカは冷たく彼に言う
ジュリウスは儀式の時から居たから不安は抱かないが、警戒のあまり冷たく接してしまう
ルイヒの大人達とバカにしてきた同期達を思い出す
「はい、ルフレとはいえ、王女様に何かあれば大変ですから」
ジュリウスはスピカに気付かい守るが為の行動
しかしスピカにはそれは自分ではなく、『王女』を守る為としか思わない
二百年空白の王の地位
それに一番近いのは、一番相応しくない自分
だから彼等は守るし心配する
スピカは来た道を引き返す、その姿を悲しく見守る
「こちらに王女様」
ジュリウスはスピカを気付かい、城内を歩き、スピカをある場所へ連れて行くとスピカに見せる
花園が一望出来る場所
「花園が美しく見て居たいのは解りますが、王女様はまだ幼い、しかしここなら城内で、我々も気付けるので我慢してください」
ジュリウスは静かに言う
スピカの安全の為、ジュリウスは寄り添い守ってくれるのだろう
それでもスピカはお礼を言わない
夜となり部屋へ戻り、イータはクッションで休み、スピカは食事をして体を清め、慣れないベッドで眠りに付く
翌日、オフィールでは昨日の即位式の映像も観た上で新たな王と宰相に喜びまつり騒ぎだ。
前王崩御から二百年、小さき町、ルイヒ出身スピカ王女、宰相ルーベルト
二人の即位式の姿が映し出されてる
乙女座の星の王女と太陽に守られた宰相と伝えられた
「ルフレの主、スピカ王女」
男はそう口にして立ち去る
ルフレにてスピカとルーベルトは、セバスチャン、アーノルド、スーザン、キースにより城内を案内され、昨日使った謁見の間の他に会議室、王の間、宰相の間は入口のみの案内だ。
王と宰相の間はスピカとルーベルト本人しか入れないのだ。
他にパーティ会場、騎士団の訓練場、馬小屋、庭に神子長や団長達の部屋も案内された。
案内が終わり、少し休み、スピカは神子長、騎士団長と訓練場に集まる
神子長はスピカの教育の為、ルフレに居る許可が下りてる。
力の訓練と王女と宰相の勉学の教師なのだ。
そして隣室ではルーベルト、光、キースが光の力の訓練を行う事になってる。
五人の神官長は、今まで扱えてない子供にどう教えるか、思案し四人は水を見る
四人の視線を感じ、逃げは許されない
五人の視線の攻防し、水が負け、意を決しスピカに近寄る
スピカの力が駄々漏れで騎士団長達はスピカの力に戸惑い落ち着かない
「スピカ様、まず集中してください、そうですね……ルイヒの好きな場所を思い浮かべてください」
スピカは水の言葉に目を瞑り、ルイヒの丘、町やルフレを見ていた丘を思い出す。
すると駄々漏れだった力が抑えていく
「そのまま力をイメージしてください」
マハト
マハトは力、力は
そう思うと風が吹く
スピカの髪が白髪になり風が舞う
騎士団長、神子長も驚く
力を発動すると髪の色が変化したのだから
「え?」
スピカが驚き目を開くと髪は黒髪に戻り風が止む
「風の力です
スピカ様の場合、力を求め、六つの力がぶつかり合い、力を表に出せなかったのでしょう
一つ一つのマハトの自覚を持ちコントロールすれば扱えましょう」
水の言葉に力があると実感するが、まだ不慣れである。
しかし自分に力がある事が何よりも嬉しい
スピカの小さな微笑みに安堵する十人
ゆっくり彼女のペースで力を扱える事、今はそれだけ、そして王女としての教育は土と、火が中心に行う
王女としての重荷だろうが、サポートしていけば自立して行くだろう
城の主、国の王、生まれ持った宿命
人との触れ合いが不慣れだが、勉学、力のコントロールに取り組む
朝、夕方、夜の散歩も欠かさず、ジュリウス、フランが隠れて護衛してる事が殆どだ
ルーベルトも訓練し勉学に励む
力は独自で練習していた為、細やかなコントロールが出来てない。
毎日コントロールと勉学に励む
互いが真逆
主の為に学ぶルーベルト、主として戸惑い愛犬と居る事を望むスピカ
スピカは花園の一部を見る
小さな花で溢れてる花園、その中に七色の薔薇がある。
一枚一枚の花弁の色が異なるレインボー・ローズ、七色の薔薇、これを見ると両親を思い出す。
「お父さん、お母さん、寂しくって辛い、でもね、オフィールが大好きだから、お父さん達が大好きだから頑張るよ」
七色のレインボー・ローズが輝く
夜、寝静まったルフレ、スピカも漸く慣れたベッドで眠る。
男はルーフバルコニーからスピカの寝室に入り、スピカに近寄るとイータが唸る。
男はイータを払う
「グウゥ」
「イータ!!」
スピカはイータの唸りで寝覚め、男とイータを見て声を上げる
見知らぬ男
スピカはルフレに居る男性の顔は覚えてない、しかし六騎士団長やセバスチャンにより紹介された人は覚えようとしてるし、何よりイータが唸ってる
スピカは呼び鈴を掴むと男に投げ付け部屋から飛び出す
「王女様!!」
騎士団長の姿にセバスチャンが来て、男は逃げ出す
夜の見回りに、見張りの交代に支障があり、確認していたらスピカの部屋から物音がし、セバスチャンと鉢合わせして向かう
セバスチャンはスピカを抱きしめ、六人は男を追い、捕らえるが男は自害してしまった。
「オフィールに災いが降りかかる」
そう言い残して
騎士団長は集まる
「王女様は」
キースが聞く
「セバスチャンとイータにより落ち着いてる」
ハワードが答える
災い、オフィールに二百年が立ちようやく新たな王女を迎えた、災いなど有り得ない。
しかしジュリウスはあることを思い出した
「五年間」
「ジュリウス?」
アベルがジュリウスを見る
「即位して五年は気を抜くな、そう伝えられた」
五年、それは成人の儀と二度目の成人の儀の期間
スピカはイータを抱き震えてる
『スピカ様、貴女は王女になるべきではなかった、このルフレは監獄でしかないのです、王とは名ばかりのオフィールの犠牲者でしかない!!』
あの男の言葉
オフィールの犠牲者、ルフレが監獄、それはどういう意味なの?
「王女様、スーザンより作らせましたホットミルクです、お飲みください」
スピカはゆっくりホットミルクを飲み、セバスチャンに寄りかかり眠る
セバスチャンは幼児のようにあやしてベッドへ寝かせ見守る。
朝起きるとスーザンの姿があった。
オフィールの民は歓喜に溢れ、ルイヒの者は王女と宰相なのだと思い知る
その中にも疑う者も居る。
嘘だ、偽りだ、何かの問題だ
力の扱えない、
アイツが王女の訳がない!
怒り、憎しみが溢れスピカを受け入れないルイヒの子供達だった。
即位式が予定通り終わり、スピカとルーベルトはセバスチャンに誘導させられ出て行くと謁見の間がざわめく
「王女様と宰相様を見た?
あんな神秘的なお姿」
「あのお髪、光輝いていて、姿は光なのにお髪は夜空のような」
「その逆に宰相様はお昼の様に眩しい太陽のようだ」
神秘的
六人の騎士団長は悲しそうに眺めてる
「どうしたキース」
一人の光の騎士が聞く
「何がだ」
「何か思い詰めた顔してるぞ、団長達全員が」
キースは彼を見る
彼はルフレに上がった際からの友人として、兄弟の様に過ごし、生活していたから、彼を誤魔化しは聞かないし、自分が団長となった時も補佐として副団長として務めてる
「まだ十歳のお子だ、親から引き離したから、心を開いてくれるか、心配なんだ」
スピカは愛犬イータとペンダントが唯一の慰めになってるだろうが、ルーベルトには本当に何も無い。
それにスピカとルーベルトは友人ではないし、スピカの友人が居そうには思えない
五年後スピカは女王になる
それまでに信頼を得てオフィールを守らないといけないのだ。
スピカはあの部屋に向かうとスーザンとアメリアが飾りを外しアーノルドはルーベルトを連れて行き、セバスチャンはスピカの私室へ送り、スーザンに任せる
セバスチャンは息を吐き出す
長年主の居なかった城内、使用人達も神子達、騎士団も決まった仕事のみの執務
そして神官長からの手紙
皆を集める
「執事長」
「神官長からの連絡があり、明日、王女様と宰相様が来られます」
皆がセバスチャンを見る
「王女様、宰相様?」
「十歳の儀式で王女様と宰相様が現れました。
明日ルフレに来ます」
皆が驚く
「アーノルドと、ジェイソン、王女様と宰相様の執事に、スーザンとアメリアが使用人に」
セバスチャンが答える
自分は執事長として支える事にした
アーノルドとジェイソンは若いがお二人に近い為に、王女様と宰相様も安心するだろう
「いいえ、私は無理です
執事長が王女様の執事に、執事長は主人の執事ですから」
ジェイソンが言う
セバスチャンは固まる
自分は裏で支えようと考えた
確かに執事長は主人、王を支える執事
『セバスチャン、お前を執事長にする』
先代から言われた
神子にも騎士団にもなれなかった自分
『私は執事長には』
『いや、お前だから執事長になれる
力をマハトを恐れるな、これはアルズのお告げだセバスチャン』
お告げ
セバスチャンは力を恐れてる
セバスチャンの力はそれほど強く無い
騎士団や神子長より弱いだろう
しかし火の力の為か威力が強過ぎて、コントロールが出来ず、自分や周りの者まで火傷をさせて、力を封じて生きて来た。
『セバスチャン、お前のマハトは、必ず主を守る』
先輩
「わかった、王女は私が務める
時間がない、各自王女様と宰相様の部屋の確認、警備、貴重品の確認」
「「はい」」
皆が動く
夜遅くまで働き、朝
「王女様は愛犬をお連れになる
大型犬で、足に怪我をしてる!」
「解りました、クッションの支度を」
音が鳴る
「来られた」
セバスチャンは左腕を掴む
ジュリウスとマリウスが来られた。
「王女様と宰相様が参りました、ご挨拶を」
「はい、参りましょう」
二人に付き従う四人
長年居なかった主、自分達の世代で会えるとは
そして入口で人目で見た自分達の主
愛犬に縋り、脅える子供
彼女が王女
彼女を見て理解した自分はこの子に、いやこの方に出会う為に生きて来たと
『セバスチャン、ルフレへいけ、それがお前の使命だ』
『頼んだぞ、セバスチャン』
貴女に忠誠を
「王女様の執務をサポートさせていただきます
執事のセバスチャンです」
即位式が終わり、飾りを外されていくスピカを見て、スーザンに任せて離れる
たった三日
主の為に支度し、主を迎えて、主の即位式
それだけでルフレは活気付き、明るくなり、忙しく動き回る
自分もまた王の居ないルフレで務めを終えると思っていたのに
スーザンが出て来た
王女が休まれたのだろう
セバスチャンは右腕を掴み、痛みに堪える
「執事長」
「大丈夫、騒ぐな」
セバスチャンは放れ、傷薬を飲み息を吐き出す
責めて王女様が落ち着くまでは堪えないと
壁に寄りかかる
王女様を視てると全てが満たされ、この痛みすら薄れる。
スーザンはスピカを休ませ、部屋を出ると柱に隠れ、痛みに堪えるセバスチャンを見る
セバスチャンは他者から一線を引く
それは使用人、執事達皆が知る事
昔、マハトの暴走で自分と先輩に火傷を負わせた。
その傷を一人で背負う彼
スーザンはセバスチャンに近寄る
「王女様がお疲れで休めました。」
「解りました、スーザンも休みなさい」
セバスチャンは料理人に頼み、軽食を持っていくとスピカはルーフバルコニーのイスで眠っていた。
セバスチャンはスピカをベッドに運び寝かせる。
セバスチャンは静かに立ち去る
スピカはスーザンが立ち去るとイータとルーフバルコニーに出て、イスに座り庭を眺める。
この部屋は何代のも王女が来て過ごされたのだろか?
そして五年後、女王となり、また別の部屋へ移動するのだろう
スピカが瞳を閉じると無の空間に男性が立っていた。
「貴方は」
男性はスピカを見る
「君の前任者と言うべきかな、前王、二百年前の王だった」
前王、二百年前の王
スピカは男性を見る
二百年前の王が何故?
前王もまたスピカを見る。
「王とはルフレに守られ、オフィールを守る、私が二百年このオフィールを守ってきた、新たな女王よ」
二百年前、オフィールを守ってきた前王
スピカは寝覚めるとベッドで眠っていた
かなりの時間が流れたのだろう、外は夕暮れ
体を起こすと軽食が置かれてあり、まだ温かい
『準備が良い』
スピカはテーブルに近寄り食事をする
『美味しい』
ルフレに来て二日目、ルーベルトは即位式が終わり、アーノルドにより私室に戻ると少しイスで休み、疲れがどっと来る
王を支えし宰相の存在、王の傍らに寄り添う自分
傍らに居たいと願う寄り添いと
「スピカ様」
彼女を呼ぶだけで、心が満たされる
星のような彼女の存在、淡い彼女に寄り添いたい
自分の部屋とスピカ様の私室は放れてる
代々宰相はこう思って居たのだろうか?
それとも自分がスピカ様を求め過ぎてるのだろうか
ルーベルトは宰相としての王への感情に戸惑うのだった
ルフレの使用人達は昔から前任から言われ伝えられて居た
『即位式が終えた王子、王女に眠りの時間を、宰相に一人の時間を』
ルーベルトを見守りアーノルドとアメリアはそっと放れる
アーノルドとアメリアは宰相の執事と使用人になった事は自分達の誇りだ。
アーノルドとアメリアは親に捨てられ二人で支え生きて来た。
その中神子達により、執事、使用人になり暮らしてきた
セバスチャン、スーザン、ジェイソンなどに支えられ学び、地位を固めてきた。
ルフレに仕える者達は問題が多く皆が支える
家族や兄弟のように
アーノルドとアメリアに帰る場所が無い
やってきた宰相の執事と使用人になった
スピカはイータを連れて部屋を出てルーフバルコニーに階段があり、それを降りると庭に出て行く
夕暮れに輝く庭を眺めて歩む
即位式が終わり、挨拶を終えたジュリウスがスピカを見付け、騎士団達を止め、自らスピカの護衛する事にした。
王女として即位させたが、心も知識も幼い、明日から力の訓練が始まる
今まで力を扱ってこなかったから不安もあるに違いない
それに前王が居たのは二百年も前の事、見本となる存在が居ない
陽が沈む
ジュリウスがスピカに近寄る
「王女様、部屋に戻りましょう」
スピカは肩を揺らし振り返るとジュリウスが居て一息する
「居たの?」
スピカは冷たく彼に言う
ジュリウスは儀式の時から居たから不安は抱かないが、警戒のあまり冷たく接してしまう
ルイヒの大人達とバカにしてきた同期達を思い出す
「はい、ルフレとはいえ、王女様に何かあれば大変ですから」
ジュリウスはスピカに気付かい守るが為の行動
しかしスピカにはそれは自分ではなく、『王女』を守る為としか思わない
二百年空白の王の地位
それに一番近いのは、一番相応しくない自分
だから彼等は守るし心配する
スピカは来た道を引き返す、その姿を悲しく見守る
「こちらに王女様」
ジュリウスはスピカを気付かい、城内を歩き、スピカをある場所へ連れて行くとスピカに見せる
花園が一望出来る場所
「花園が美しく見て居たいのは解りますが、王女様はまだ幼い、しかしここなら城内で、我々も気付けるので我慢してください」
ジュリウスは静かに言う
スピカの安全の為、ジュリウスは寄り添い守ってくれるのだろう
それでもスピカはお礼を言わない
夜となり部屋へ戻り、イータはクッションで休み、スピカは食事をして体を清め、慣れないベッドで眠りに付く
翌日、オフィールでは昨日の即位式の映像も観た上で新たな王と宰相に喜びまつり騒ぎだ。
前王崩御から二百年、小さき町、ルイヒ出身スピカ王女、宰相ルーベルト
二人の即位式の姿が映し出されてる
乙女座の星の王女と太陽に守られた宰相と伝えられた
「ルフレの主、スピカ王女」
男はそう口にして立ち去る
ルフレにてスピカとルーベルトは、セバスチャン、アーノルド、スーザン、キースにより城内を案内され、昨日使った謁見の間の他に会議室、王の間、宰相の間は入口のみの案内だ。
王と宰相の間はスピカとルーベルト本人しか入れないのだ。
他にパーティ会場、騎士団の訓練場、馬小屋、庭に神子長や団長達の部屋も案内された。
案内が終わり、少し休み、スピカは神子長、騎士団長と訓練場に集まる
神子長はスピカの教育の為、ルフレに居る許可が下りてる。
力の訓練と王女と宰相の勉学の教師なのだ。
そして隣室ではルーベルト、光、キースが光の力の訓練を行う事になってる。
五人の神官長は、今まで扱えてない子供にどう教えるか、思案し四人は水を見る
四人の視線を感じ、逃げは許されない
五人の視線の攻防し、水が負け、意を決しスピカに近寄る
スピカの力が駄々漏れで騎士団長達はスピカの力に戸惑い落ち着かない
「スピカ様、まず集中してください、そうですね……ルイヒの好きな場所を思い浮かべてください」
スピカは水の言葉に目を瞑り、ルイヒの丘、町やルフレを見ていた丘を思い出す。
すると駄々漏れだった力が抑えていく
「そのまま力をイメージしてください」
マハト
マハトは力、力は
そう思うと風が吹く
スピカの髪が白髪になり風が舞う
騎士団長、神子長も驚く
力を発動すると髪の色が変化したのだから
「え?」
スピカが驚き目を開くと髪は黒髪に戻り風が止む
「風の力です
スピカ様の場合、力を求め、六つの力がぶつかり合い、力を表に出せなかったのでしょう
一つ一つのマハトの自覚を持ちコントロールすれば扱えましょう」
水の言葉に力があると実感するが、まだ不慣れである。
しかし自分に力がある事が何よりも嬉しい
スピカの小さな微笑みに安堵する十人
ゆっくり彼女のペースで力を扱える事、今はそれだけ、そして王女としての教育は土と、火が中心に行う
王女としての重荷だろうが、サポートしていけば自立して行くだろう
城の主、国の王、生まれ持った宿命
人との触れ合いが不慣れだが、勉学、力のコントロールに取り組む
朝、夕方、夜の散歩も欠かさず、ジュリウス、フランが隠れて護衛してる事が殆どだ
ルーベルトも訓練し勉学に励む
力は独自で練習していた為、細やかなコントロールが出来てない。
毎日コントロールと勉学に励む
互いが真逆
主の為に学ぶルーベルト、主として戸惑い愛犬と居る事を望むスピカ
スピカは花園の一部を見る
小さな花で溢れてる花園、その中に七色の薔薇がある。
一枚一枚の花弁の色が異なるレインボー・ローズ、七色の薔薇、これを見ると両親を思い出す。
「お父さん、お母さん、寂しくって辛い、でもね、オフィールが大好きだから、お父さん達が大好きだから頑張るよ」
七色のレインボー・ローズが輝く
夜、寝静まったルフレ、スピカも漸く慣れたベッドで眠る。
男はルーフバルコニーからスピカの寝室に入り、スピカに近寄るとイータが唸る。
男はイータを払う
「グウゥ」
「イータ!!」
スピカはイータの唸りで寝覚め、男とイータを見て声を上げる
見知らぬ男
スピカはルフレに居る男性の顔は覚えてない、しかし六騎士団長やセバスチャンにより紹介された人は覚えようとしてるし、何よりイータが唸ってる
スピカは呼び鈴を掴むと男に投げ付け部屋から飛び出す
「王女様!!」
騎士団長の姿にセバスチャンが来て、男は逃げ出す
夜の見回りに、見張りの交代に支障があり、確認していたらスピカの部屋から物音がし、セバスチャンと鉢合わせして向かう
セバスチャンはスピカを抱きしめ、六人は男を追い、捕らえるが男は自害してしまった。
「オフィールに災いが降りかかる」
そう言い残して
騎士団長は集まる
「王女様は」
キースが聞く
「セバスチャンとイータにより落ち着いてる」
ハワードが答える
災い、オフィールに二百年が立ちようやく新たな王女を迎えた、災いなど有り得ない。
しかしジュリウスはあることを思い出した
「五年間」
「ジュリウス?」
アベルがジュリウスを見る
「即位して五年は気を抜くな、そう伝えられた」
五年、それは成人の儀と二度目の成人の儀の期間
スピカはイータを抱き震えてる
『スピカ様、貴女は王女になるべきではなかった、このルフレは監獄でしかないのです、王とは名ばかりのオフィールの犠牲者でしかない!!』
あの男の言葉
オフィールの犠牲者、ルフレが監獄、それはどういう意味なの?
「王女様、スーザンより作らせましたホットミルクです、お飲みください」
スピカはゆっくりホットミルクを飲み、セバスチャンに寄りかかり眠る
セバスチャンは幼児のようにあやしてベッドへ寝かせ見守る。
朝起きるとスーザンの姿があった。