生物室は旧校舎にあって、新校舎の端にあるうちのクラスからは遠い。
パタパタと急足で歩きながら、遠くに吹奏楽部の練習音を感じる。

放課後特有のこの空気感は、案外嫌いじゃない。

とは言え、何か部活に入っているわけでもなく、大抵放課後は友達とカラオケに行ったり買い物に行ったり、家で漫画読んだり。
非生産的だよなぁとは思うけど、そんな時間もまた嫌いではないんだ。

友達は好きだし、遊ぶのも楽しい。
なんとなくそんな毎日を過ごすのも、悪くないと思う。

野球部の掛け声を背に、どこのカラオケに行ったのかLINEを入れながら、ようやく辿り着いた生物室のドアを勢いよく開けた。

放課後の特別教室はしんと静まりかえっていて、水槽のコポコポという音だけが夕日の中で響いている。

誰もいないその教室に忘れられたノートを手に取り、特に何に目を配るわけでもなく変える予定だった。

でも、水槽の前に座る人影に気付いて、ドアの前で足を止める。

勢いよく開けたドアに振り向いたその顔と水槽の音は、あの日の水族館と簡単にリンクした。

......水族館の人だ。