......わたし、彼のこと知ってる。
しばらく眺めた後、不意に気付いた。
彼は多分、同じ高校の子だ。
名前は思い出せないけれど、見かけたことがある。確か、同じ学年。
そこまで考えて、ふと盗み見をしている自分に戸惑い、視線を落として足早に通り過ぎた。
敢えて目の前を通り過ぎてみたけれど、彼は微動だにしない。
その視線の先も相変わらず、水槽の中だ。
......1人で、来たのだろうか。
自分も今1人なのは棚に上げて、1人で水族館に来る状況を想像してみるも、全く理解できずにいた。
わたしと同じ様に、もしかしてデート後とか?
なんて思ってみたけれど、それもきっと違うと感じる。
それ程に、彼の視線の先は、水槽しかなかった。