あの日、家に帰ってスマホを開くのを躊躇っていたけど、寝る前になってようやくカバンからスマホを取り出した。

画面上に光る新着LINEのお知らせ。
震える指で開いたら、1番上に浅野とのトーク履歴が出てきて、思わずスマホを伏せた。

心臓がドクドクと嫌な音を立てる。
ダメだったらどうしよう。更に会うのが気まずくなる。こんなLINE送らなきゃよかった。
マイナス思考の堂々巡りにいい加減嫌気がさし、もう結果は出てるんだ!と思い切ってトークを開いた。

ぎゅっと目を瞑り、一呼吸置いて薄目を開く。

『いいよ』

......たった一言。その一言に、身体中の力がふわっと抜けるのがわかる。

......いいんだ。行ってくれるんだ。
一緒に、花火大会。

そう思うと、今までとは違う心臓の音が駆け足で身体中を巡る気がした。

会えるんだ、夏休み。
しかも、花火大会で。

ぶわっと身体に熱がこもり、嬉しいのか恥ずかしいのか戸惑いを隠せないまま、とりあえず後半を落ち着けるために玲奈に報告LINEをしたためる。

そのまま枕に顔をダイブさせて、声にならない叫びをバタ足と共にぶつけた。

花火大会の日までは、秒だった。
玲奈は気合入れて浴衣で行け!と最後まで言っていたけれど、どうしてもそこまで気合を入れるのが憚られ、結局シンプルなノースリーブのワンピースに止め置く。

それでも髪型はいつも以上に気合を入れて、長い髪を丁寧に巻いてまとめた。

学校の外で会うのは水族館以来だけれど、花火大会というシチュエーションは水族館とはまた一味違う。

夕方になっても全く涼しくならない夏の気温をむき出しの腕に纏いながら、待ち合わせ場所へと向かった。