小さな頃、家族で水族館に出掛けた。
お兄ちゃんは魚に夢中になっていたけれど、水槽の中を泳ぐ得体の知れない生き物達は、わたしを何一つ魅了しなかった。

ぽこぽこと浮かぶ水泡を眺めながら、丸い中に浮かぶ幼いわたしを思い出す。

あの頃からわたしは、何か少しでも成長しているのだろうか。
浮かんでは消える水泡達に、儚さも美しさも感じない。

それはただの、泡だった。

「ひな、別れよう」

ひたすら水槽の中の泡を眺めただけの水族館。
出口の前にはミュージアムショップがあり、小さな女の子がキャッキャとイルカのぬいぐるみを抱えて出ていくのが見える。

彼女よりも大きいんじゃないかと思う程のピンクのイルカを目の端で捉えながら、今聞こえたセリフを反芻する。

今、別れようって言われた、よね?

「え......別れようって」
「ひな、そんなに俺のこと好きじゃないよね。今日もそんな、楽しくなさそうだったし」
「いや、そんなこと......」
「友達といる時は凄い楽しそうだけど、俺といる時はそんな顔あんま見せないじゃん。なんか......結構、しんどいし。若干冷めた」

冷めた。
なかなか鋭い言葉はわたしの胸をサクッと刺したが、案外痛みがないことにも気付いていた。
彼が言うことも、あながち間違いではないのかもしれない。

「......うん、わかった」

あっさりと別れを認めたわたしを少し驚いた表情で見たけど、すぐに「そういうとこだよ」と言い捨てる様にして背を向ける。

......3ヶ月、か。
高1の終わりに告白されて、何となく周りにほだされて付き合い始めてから、約3ヶ月。

始まりから終わりまで、特に何も変わらなかった。
それが、答えだった。