インテリアに関しては素人の限界を感じたので、夜からはモーニングの改造をすることにした。
 そうは言っても、和食モーニングにする気満々だったからなあ。
 洋食は『ペール』がいるから無理だし。
 じゃあイタリアン? 思い切って中華? でも常連さんは油こってりで味の濃いものは好まないよねえ。

 それとも、この際もっと若い層を取り込むべきかな。それもいいかも。
 じゃあ、尚更、モーニングに力を入れないと。

「うちの売りが欲しいよね。奇抜すぎない、でも光る個性というか。『藍』と言えばこれ! みたいなやつ」

 考え込みつつ店内をうろうろしていたら、ドアベルが鳴る。

「だーかーらー! 臨時休業なんだから暇つぶしだけに来ないで!」

 私がドアに向かってそう叫ぶと、目をまん丸くしてこちらを見ている中年男性が一人。
 銀太じゃない! マズイ!

「ごめんなさい! 銀……あ、近所の悪ガキがイタズラしにくるのでそれなのかと」

「あ、いえ。その、今日は臨時休業なんですね。こちらこそ、ごめんなさい」

 その困ったような顔を見ていて思い出した。
 近くのパン屋『たいよう』の店長だ。
 店長がなんだか疲れたような顔をしていたので、特別に店を開けることにした。
 考えていてもアイデアは出てこないし。

「いやー。うちのパン屋、最近、お客が減ってきてねえ。ほら、小学校の近くに大きなスーパーできたよね。あそこにパン屋があるんだって。しかも全品、百円」

 コーヒーを出した途端、店長は愚痴をこぼし始めた。

「百円は痛いですね。あそこ、コロッケも十八円で売ってるから商店街の肉屋のおばちゃんが『うちは十円にしようかしら』って対抗しようとしていましたよ」

「うわー。十八円かあ。お客を呼び込むためとはいえ、その値段は個人商店では無理だなあ」

 店長は頭を抱える。
 その丸みを帯びた体がなんとなくクリームパンを連想させる。
 ああ、クリームパン食べたい。
 そこで私はふと閃いた。
 ああ、そうか。その手があったか!
 一人頷くと、コーヒーを飲みながら延々と愚痴をこぼしている店長に、私はこう尋ねてみる。

「うちの店と『たいよう』が同時に儲かりそうな方法を思い付いたんですが、話を聞いてくれます?」