次の日は午前中だけ臨時休業をした。
臨時休業をした理由は、店のインテリアを変えるためだ。
変えると言っても少しいじるだけ。
先にメニューを見直すべきかもしれないけれど、やっぱり店の内装の古臭さが気になるんだよね。
百円ショップとホームセンターをまわって、目当ての物を買い終えると、ついでに例のコーヒーチェーン店ができるという空き地を覗いてみた。
空き地だった場所は、既に工事が始まっていて、近寄れない状態だった。
コーヒーチェーン店の名前だけでも知りたかったんだけど、しょうがない。
店に戻ると、早速、模様替えスタート。
ベージュなんだか黄ばみなんだか分からなくなっている壁に木製のフォトフレームを掛けていく。
フォトフレームの中の写真は、花や動物などの癒されるものにしてみた。
「ええっと、きっちり並べるよりも、ちょっとランダムがいいのかな」
私はテーブルの上に開きっぱなしで置いたインテリア雑誌を見ながら呟く。
これも模様替えのために購入した。
フォトフレームを飾り終えると、百円ショップで購入したフラッグガーランドを壁にかけてみる。
「なんかお誕生日会みたいだ……」
フラッグガーランドを飾った壁を眺めつつ呟く。
雑誌で見てかわいいと思ったんだけどなあ。
腕を組んで首を傾げていると、カランコロンという音が聞こえた。
「いら――じゃなかった。ごめんなさい今日は臨時休業なんです」
私はそう言ってから、中に入ってきた人物を睨みつける。
「銀太。あんた何しに来たのよ」
「睨むな睨むな。せっかくのまあまあかわいい顔が台無しだ」
「微妙な褒め方すんな! あと三秒で帰らないと椅子が飛ぶわよ!」
「待って。からかいに来たんじゃねーよ。心配したんだよ」
「はあ? 嘲笑ってたの間違いじゃなくて?」
「お前が勝手に想像してる俺ってかなり心汚れてるよな」
「ねえ。このフラッグガーランド、変?」
「否定しないのな。ショックだなー」
銀太はそう言いながらも、私が指さしたほうを眺めて、それから続ける。
「誰の誕生日パーティー?」
「だよねー」
私はガックリと肩を落とした。フラッグガーランドは外そう。
「もしかしてインテリアから変えてみようとしてる?」
銀太の言葉に私は力なく頷く。
「じゃあ、そのカーテンから変えた方がいいだろ」
「雑誌に載ってるようなオシャレなカーテンなかったの。やっぱりイケマまで行くべきかなー」
考え込む私に銀太まで黙りこんだと思ったら、急いで店を出て行った。
なにしきにたんだ、あいつは。
すると、十分ほどで銀太が戻ってきた。
私が『用がないなら帰って』と口を開くより前に、奴は手に持っていた布を広げて見せる。
それは赤と白のギンガムチェックのカフェカーテン。
「これ、姉貴の部屋にあったやつ。もらってきた」
「いいの?」
「この店が潰れるのを黙ってみてるくらいなら、姉貴に泥棒と呼ばれようがかまわん」
「無許可かよ」
私は言いながらもカフェカーテンを取り付ける。
環さんにはうちのコーヒー無料券を何枚か渡しておこう。
「へー。壁に写真、飾ったんだ」
銀太が先ほど掛けたフォトフレームを眺めながら言った。
「ちょっと華やかになった気がしないでもないよね」
「もっと自信持てよ。ってゆーか、どうせなら梢が小さい頃の写真とか飾ったら? 常連も喜ぶんじゃん?」
「えー。やだよ。それに私の小さい頃の写真なんて、それこそ物置の奥深くで見つけるのは至難の業だし」
「じゃあ、それも持ってきてやろうか」
「え? なんであんたが私の小さい頃の写真、持ってるの?」
私が驚いて言うと、銀太は慌てて反論する。
「おっ、お前の写真なんか持ってねーよ! 俺の小さい頃の写真だよ!」
「そんなもん飾ってどーするのよ」
私が銀太を見ると、奴はやけに挙動不審になり、それから「賑やかしだよ!」と言いながらカウンターの席に座ってふんぞり返る。
「ブレンドコーヒー……おわっ!」
銀太の姿が消えたと思ったら、直後にどん、という音がした。
慌ててそちらを見てみると銀太は床に尻もちをついている。
背もたれのない椅子にふんぞり返って座るからだ。
臨時休業をした理由は、店のインテリアを変えるためだ。
変えると言っても少しいじるだけ。
先にメニューを見直すべきかもしれないけれど、やっぱり店の内装の古臭さが気になるんだよね。
百円ショップとホームセンターをまわって、目当ての物を買い終えると、ついでに例のコーヒーチェーン店ができるという空き地を覗いてみた。
空き地だった場所は、既に工事が始まっていて、近寄れない状態だった。
コーヒーチェーン店の名前だけでも知りたかったんだけど、しょうがない。
店に戻ると、早速、模様替えスタート。
ベージュなんだか黄ばみなんだか分からなくなっている壁に木製のフォトフレームを掛けていく。
フォトフレームの中の写真は、花や動物などの癒されるものにしてみた。
「ええっと、きっちり並べるよりも、ちょっとランダムがいいのかな」
私はテーブルの上に開きっぱなしで置いたインテリア雑誌を見ながら呟く。
これも模様替えのために購入した。
フォトフレームを飾り終えると、百円ショップで購入したフラッグガーランドを壁にかけてみる。
「なんかお誕生日会みたいだ……」
フラッグガーランドを飾った壁を眺めつつ呟く。
雑誌で見てかわいいと思ったんだけどなあ。
腕を組んで首を傾げていると、カランコロンという音が聞こえた。
「いら――じゃなかった。ごめんなさい今日は臨時休業なんです」
私はそう言ってから、中に入ってきた人物を睨みつける。
「銀太。あんた何しに来たのよ」
「睨むな睨むな。せっかくのまあまあかわいい顔が台無しだ」
「微妙な褒め方すんな! あと三秒で帰らないと椅子が飛ぶわよ!」
「待って。からかいに来たんじゃねーよ。心配したんだよ」
「はあ? 嘲笑ってたの間違いじゃなくて?」
「お前が勝手に想像してる俺ってかなり心汚れてるよな」
「ねえ。このフラッグガーランド、変?」
「否定しないのな。ショックだなー」
銀太はそう言いながらも、私が指さしたほうを眺めて、それから続ける。
「誰の誕生日パーティー?」
「だよねー」
私はガックリと肩を落とした。フラッグガーランドは外そう。
「もしかしてインテリアから変えてみようとしてる?」
銀太の言葉に私は力なく頷く。
「じゃあ、そのカーテンから変えた方がいいだろ」
「雑誌に載ってるようなオシャレなカーテンなかったの。やっぱりイケマまで行くべきかなー」
考え込む私に銀太まで黙りこんだと思ったら、急いで店を出て行った。
なにしきにたんだ、あいつは。
すると、十分ほどで銀太が戻ってきた。
私が『用がないなら帰って』と口を開くより前に、奴は手に持っていた布を広げて見せる。
それは赤と白のギンガムチェックのカフェカーテン。
「これ、姉貴の部屋にあったやつ。もらってきた」
「いいの?」
「この店が潰れるのを黙ってみてるくらいなら、姉貴に泥棒と呼ばれようがかまわん」
「無許可かよ」
私は言いながらもカフェカーテンを取り付ける。
環さんにはうちのコーヒー無料券を何枚か渡しておこう。
「へー。壁に写真、飾ったんだ」
銀太が先ほど掛けたフォトフレームを眺めながら言った。
「ちょっと華やかになった気がしないでもないよね」
「もっと自信持てよ。ってゆーか、どうせなら梢が小さい頃の写真とか飾ったら? 常連も喜ぶんじゃん?」
「えー。やだよ。それに私の小さい頃の写真なんて、それこそ物置の奥深くで見つけるのは至難の業だし」
「じゃあ、それも持ってきてやろうか」
「え? なんであんたが私の小さい頃の写真、持ってるの?」
私が驚いて言うと、銀太は慌てて反論する。
「おっ、お前の写真なんか持ってねーよ! 俺の小さい頃の写真だよ!」
「そんなもん飾ってどーするのよ」
私が銀太を見ると、奴はやけに挙動不審になり、それから「賑やかしだよ!」と言いながらカウンターの席に座ってふんぞり返る。
「ブレンドコーヒー……おわっ!」
銀太の姿が消えたと思ったら、直後にどん、という音がした。
慌ててそちらを見てみると銀太は床に尻もちをついている。
背もたれのない椅子にふんぞり返って座るからだ。