木枯らしが吹きすさぶ季節に、外の掃除はなかなか堪える。
 私はぶるっと体を震わせて、それから店の外に散らばった枯葉を箒ではき始めた。

 喫茶店の敷地内だというのに地面が落ち葉だらけではみっともない。
 ただ、うちの店はレトロな外観だから、落ち葉も似合うと言えば似合うけれど。

 そんなことを思いつつ、目の前の建物を眺める。まるで昭和の映画に出てきそうだけどオシャレとは程遠い外観だ。看板には懐かしいフォントで『喫茶店 藍』と書かれてある。
 しかたがない。
 創業五十年の化石のような喫茶店なんだから。
 ここまで古いところは、愛知でもきっと珍しいはずだ。
  
 元マスターだった祖父から、この喫茶店を引き継いで、まだ八ヶ月。
 今年十九歳になったばかりのナウでヤングな私としては、この古臭い外観だけでも変えてしまいたかったのだけれど、常連客に『ここがオサレなカヘ(カフェと言いたかったらしい)みたいになったら、藍が潰れたと勘違いしそうだなあ』と言われて、泣く泣く中止。

 でも、インテリアは替えられなくなくても、モーニングのメニューだけはちょっとばかしアレンジを加えてみた。
 私は箒を動かす手を止め、ちらりと斜め向かいの建物を見た。

「相変わらずセンスいいな」

 私はそれだけ呟くと、さっさと掃除を終え、『営業中』の札を下げてから店内に戻る。