ステージから溢れる光を、全身に受け、彼の姿を目を丸くして見つめていた。まるでその目は、数年離れ離れになっていた恋人と、再会したようなものだった。
「……カナ」
その目には、涙が浮かんでいた。もう彼女は、俺が隣りにいることも忘れて、ただ彼女に向かって歌う翔奏を見ていた。
その時、翔奏も俺たち……正確には深桜の方を真っすぐと見つめて、微かに頬を緩めた。
今にも零れそうな深桜の涙が、翔奏が彼女に向かって微笑んだとき、頬を伝って流れた。
それを見たとき、もう無理だと思った。俺はそっと彼女の手を握った。でもそれにも気づくことなく、深桜は翔奏のことを見つめていた。
もうこれが本当に最後だろう。
彼女といる時間はもう残り少ない。その時間すらないみたいに、彼女は俺の隣りには、もういない。今にも飛び出して、ステージに向かわないかそわそわして、思わず、そっと彼女の手を握ったけれど、こうやって手を握っているのに、俺たちの繋がりは解けてしまった。
俺は、ぴくりとも反応しない深桜の手を、彼女との関係を断ち切るみたいにそっと離した。
そして心の中で小さく別れの言葉を呟いて、今にも彼女の手から零れ落ちそうなライトをそっと手に取り、自分のライトと重ねた。
翔奏ではなく、俺は、そのぼんやりと水色の光を放つ二つのライトをぼんやりと眺めた。
♮
アンコールも無事に終わり、ライブは熱気に包まれながら幕を閉じた。余韻に浸りながら、ゆっくりと大勢の人たちが、出口へと向かう。そんな中、深桜が俺の顔を見上げた。
「先輩? どうしたんですか?」
もう彼女との時間は、これで終わりだ。
「楽しかったか?」
「はい! もう私意識が飛んじゃって! でも、一つ一つの音が心に響いて、自分の目で見てる気がしないくらい、なんかぼんやりとしちゃったんですけど。なんかもうすごかったです。本当に先輩ありがとうございました!! あんな間近で見れて、嬉しいです!!」
興奮を露わに、深桜が言葉を捲し立てる。
たぶん深桜の言ったことは、間違いない。あのときの深桜は、俺の傍にずっといた彼女ではなく、「ちぃ」だった。記憶を失くす前の彼女が、翔奏を見ていたのだ。
でも、深桜にはその自覚がないようだ。記憶を取り戻した訳ではないらしい。
「深桜は翔奏に会いたいよな?」
「……カナ」
その目には、涙が浮かんでいた。もう彼女は、俺が隣りにいることも忘れて、ただ彼女に向かって歌う翔奏を見ていた。
その時、翔奏も俺たち……正確には深桜の方を真っすぐと見つめて、微かに頬を緩めた。
今にも零れそうな深桜の涙が、翔奏が彼女に向かって微笑んだとき、頬を伝って流れた。
それを見たとき、もう無理だと思った。俺はそっと彼女の手を握った。でもそれにも気づくことなく、深桜は翔奏のことを見つめていた。
もうこれが本当に最後だろう。
彼女といる時間はもう残り少ない。その時間すらないみたいに、彼女は俺の隣りには、もういない。今にも飛び出して、ステージに向かわないかそわそわして、思わず、そっと彼女の手を握ったけれど、こうやって手を握っているのに、俺たちの繋がりは解けてしまった。
俺は、ぴくりとも反応しない深桜の手を、彼女との関係を断ち切るみたいにそっと離した。
そして心の中で小さく別れの言葉を呟いて、今にも彼女の手から零れ落ちそうなライトをそっと手に取り、自分のライトと重ねた。
翔奏ではなく、俺は、そのぼんやりと水色の光を放つ二つのライトをぼんやりと眺めた。
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アンコールも無事に終わり、ライブは熱気に包まれながら幕を閉じた。余韻に浸りながら、ゆっくりと大勢の人たちが、出口へと向かう。そんな中、深桜が俺の顔を見上げた。
「先輩? どうしたんですか?」
もう彼女との時間は、これで終わりだ。
「楽しかったか?」
「はい! もう私意識が飛んじゃって! でも、一つ一つの音が心に響いて、自分の目で見てる気がしないくらい、なんかぼんやりとしちゃったんですけど。なんかもうすごかったです。本当に先輩ありがとうございました!! あんな間近で見れて、嬉しいです!!」
興奮を露わに、深桜が言葉を捲し立てる。
たぶん深桜の言ったことは、間違いない。あのときの深桜は、俺の傍にずっといた彼女ではなく、「ちぃ」だった。記憶を失くす前の彼女が、翔奏を見ていたのだ。
でも、深桜にはその自覚がないようだ。記憶を取り戻した訳ではないらしい。
「深桜は翔奏に会いたいよな?」