彼と話したら、昔、ライブハウスで音楽をやっていたころを思い出した。
あの頃は、ただがむしゃらに歌を歌って、一人で時間があれば曲をかいたり、練習をした。今もやっていることは、変わらないかもしれないけれど、もう一人ではない。
聴いてくれる人もたくさんいるし、応援してくれる人もいる。
「でも今はライブに集中しなさい」
沖浦さんの声に、俺は深々と頷いて応えた。沖浦さんの期待にも応えたいし、彼女がたくさんの時間を費やして作り上げたステージを、無駄にはしたくない。一人で作り上げるステージではないのだ。
運転する沖浦さんを何気なくちらりと窺うと、彼女の胸元に光るものを見つけて、俺は目を見張った。彼女の首に、見慣れないペンダントがかけられていたからだ。
「沖浦さん、珍しいですね。そういうのつけるの」
「あぁ、これ? 彼から貰ったのよ。記念日とかクリスマスとか気にしない彼だったけど、誕生日はしっかり覚えててくれて、そのときにね」
「わぁ。沖浦さんの彼氏ってどんな人か気になりますね。きっとすごい仕事できる人っぽい」
今まで装飾品を全く身につけていなかった沖浦さんに、俺は動揺を隠すことができなかった。
「……そうでもないわよ。そんなことよりちゃんと休めた?」
「えぇ。まぁ万全ではないですけど」
沖浦さんにもっといろいろ訊きたかったけれど、これ以上何か言うと鋭い瞳で一瞥されそうだ。今は、ただでさえ疲れもストレスも溜まっているだろう。気にはなるけれど、ライブが一段落して、機会があれば訊いてみよう。
今はお互いのことに気を配り合うしかない。沖浦さんも俺も自分のことは二の次で、仕事のことを考えてしまうから、沖浦さんのことは、しっかり見ておかなければいけない。
「沖浦さんこそ大丈夫ですか?」
「寝る暇なかったけど、頭は冴えてるから平気よ。でも、あなたは移動中に休んでもらって構わないから。着いたら起こしてあげるわ」
「ありがとうございます」
本当は運転を変わってやりたいくらいだけど、免許を持っていない俺には無理だった。
「私のことは気にしないでいいわ。あなたが仕事してる時に、私は休むことだってできるのだから」
「……本当にすみません。そう言ってもらえると助かります」
俺は彼女の言葉に甘えて、シートを倒した。こうやって身体を横にすると、また意識が徐々に遠のいていく。
あの頃は、ただがむしゃらに歌を歌って、一人で時間があれば曲をかいたり、練習をした。今もやっていることは、変わらないかもしれないけれど、もう一人ではない。
聴いてくれる人もたくさんいるし、応援してくれる人もいる。
「でも今はライブに集中しなさい」
沖浦さんの声に、俺は深々と頷いて応えた。沖浦さんの期待にも応えたいし、彼女がたくさんの時間を費やして作り上げたステージを、無駄にはしたくない。一人で作り上げるステージではないのだ。
運転する沖浦さんを何気なくちらりと窺うと、彼女の胸元に光るものを見つけて、俺は目を見張った。彼女の首に、見慣れないペンダントがかけられていたからだ。
「沖浦さん、珍しいですね。そういうのつけるの」
「あぁ、これ? 彼から貰ったのよ。記念日とかクリスマスとか気にしない彼だったけど、誕生日はしっかり覚えててくれて、そのときにね」
「わぁ。沖浦さんの彼氏ってどんな人か気になりますね。きっとすごい仕事できる人っぽい」
今まで装飾品を全く身につけていなかった沖浦さんに、俺は動揺を隠すことができなかった。
「……そうでもないわよ。そんなことよりちゃんと休めた?」
「えぇ。まぁ万全ではないですけど」
沖浦さんにもっといろいろ訊きたかったけれど、これ以上何か言うと鋭い瞳で一瞥されそうだ。今は、ただでさえ疲れもストレスも溜まっているだろう。気にはなるけれど、ライブが一段落して、機会があれば訊いてみよう。
今はお互いのことに気を配り合うしかない。沖浦さんも俺も自分のことは二の次で、仕事のことを考えてしまうから、沖浦さんのことは、しっかり見ておかなければいけない。
「沖浦さんこそ大丈夫ですか?」
「寝る暇なかったけど、頭は冴えてるから平気よ。でも、あなたは移動中に休んでもらって構わないから。着いたら起こしてあげるわ」
「ありがとうございます」
本当は運転を変わってやりたいくらいだけど、免許を持っていない俺には無理だった。
「私のことは気にしないでいいわ。あなたが仕事してる時に、私は休むことだってできるのだから」
「……本当にすみません。そう言ってもらえると助かります」
俺は彼女の言葉に甘えて、シートを倒した。こうやって身体を横にすると、また意識が徐々に遠のいていく。