私は先輩の夕陽に染まった後ろ姿を追いかけるように、後に続いた。
♭
彼女と再会するきっかけをくれた小説賞の幕が下りた。授賞式も無事に終了し、マスコミからの取材も、そのことからライブへの話題へと変わっていった。
先行発売はもう始まっているし、打ち合わせも増えていった。
沖浦さんの忙しさも日に日に増えているけど、彼女の仕事の腕は衰えない。むしろ気合いが入っているし、その力はいったいどこから湧いてくるのか不思議だった。
でも、沖浦さんに負けてはいられない。打ち合わせも練習も全力で取り組んで、休めるときは休んだ。
ライブのために全てを打ち込んでいくと、時間がどんどん過ぎていって、今、何日なのかも忘れてしまう。
「それじゃあ翔奏。また昼過ぎに迎えに来るから」
「はい。ありがとうございます。お疲れ様です」
「お疲れ様」
運転席に座る沖浦さんは、窓を閉めて車を走らせた。朝の静まり返った街中に沖浦さんの車が消えていくのを見送ると、俺はスマホで時間を確認した。
朝の五時をちょうど回ったところで、気だるい身体を引きずる様にセキュリティーロックのかかったマンションのドアを潜り、エレベーターのボタンを押した。
この時間なら、まだ智歌は寝ているだろう。
連絡したら迷惑極まりない。自分の時間と彼らの日常が、ずれているのを感じてしまう。身体は疲れているけれど、眠くはない。
昨日は雑誌の取材に、ラジオ。その後にライブの打ち合わせに続けて、スタジオで練習。もはや、昨日の出来事かも判らなくなっていた。
こうやって自分で時間を確認するのも、久しぶりな気がする。よく見たらスマホの電池が切れかかっていた。
俺は部屋の鍵を開けて中に入ると、スマホの充電をセットしてシャワーを浴びた。
直接、智歌にチケットを渡したかったけれど、どうやら俺にはそんな暇はないらしく、沖浦さんにポストに投函するように頼んだ。沖浦さんが言うには、会う暇があるなら少しでも休むようにとのことだ。
だから彼女はポストに投函するのも自らかってでてくれた。沖浦さんなら間違いなく、投函してくれる。忘れたりは、絶対にしないから安心だ。
もしかしたら、もうそうしてくれているかもしれない。
だから智歌にできるだけ早く連絡を入れたかった。
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彼女と再会するきっかけをくれた小説賞の幕が下りた。授賞式も無事に終了し、マスコミからの取材も、そのことからライブへの話題へと変わっていった。
先行発売はもう始まっているし、打ち合わせも増えていった。
沖浦さんの忙しさも日に日に増えているけど、彼女の仕事の腕は衰えない。むしろ気合いが入っているし、その力はいったいどこから湧いてくるのか不思議だった。
でも、沖浦さんに負けてはいられない。打ち合わせも練習も全力で取り組んで、休めるときは休んだ。
ライブのために全てを打ち込んでいくと、時間がどんどん過ぎていって、今、何日なのかも忘れてしまう。
「それじゃあ翔奏。また昼過ぎに迎えに来るから」
「はい。ありがとうございます。お疲れ様です」
「お疲れ様」
運転席に座る沖浦さんは、窓を閉めて車を走らせた。朝の静まり返った街中に沖浦さんの車が消えていくのを見送ると、俺はスマホで時間を確認した。
朝の五時をちょうど回ったところで、気だるい身体を引きずる様にセキュリティーロックのかかったマンションのドアを潜り、エレベーターのボタンを押した。
この時間なら、まだ智歌は寝ているだろう。
連絡したら迷惑極まりない。自分の時間と彼らの日常が、ずれているのを感じてしまう。身体は疲れているけれど、眠くはない。
昨日は雑誌の取材に、ラジオ。その後にライブの打ち合わせに続けて、スタジオで練習。もはや、昨日の出来事かも判らなくなっていた。
こうやって自分で時間を確認するのも、久しぶりな気がする。よく見たらスマホの電池が切れかかっていた。
俺は部屋の鍵を開けて中に入ると、スマホの充電をセットしてシャワーを浴びた。
直接、智歌にチケットを渡したかったけれど、どうやら俺にはそんな暇はないらしく、沖浦さんにポストに投函するように頼んだ。沖浦さんが言うには、会う暇があるなら少しでも休むようにとのことだ。
だから彼女はポストに投函するのも自らかってでてくれた。沖浦さんなら間違いなく、投函してくれる。忘れたりは、絶対にしないから安心だ。
もしかしたら、もうそうしてくれているかもしれない。
だから智歌にできるだけ早く連絡を入れたかった。