翔奏がどこまで辿りついたのかも、まだ分からないのだ。俺の思いすごしならいいと、微かな笑みが浮かんだけど、本気で笑えはしない。
そんなことはあり得ないと、確信めいた気持ちがむしばんでいく。
俺は諦めたようにため息をついて、翔奏に電話をかけた。
もしかしたら忙しくて、もう電話に出れないかもしれない。そんなことを軽く考えたけど、その思いとは裏腹に翔奏はすぐに電話に出た。
「ごめん。ちょっといろいろあって遅くなった。今大丈夫か?」
いつもの明るい声を装って、俺は切り出した。心の中は重いはずなのに、嘘を重ねるごとに嘘がうまくなっているみたいだ。
「あぁ。今日、休暇とったから」
「そうか。それで何?」
翔奏の声はとても沈んでいて、小さかった。怒りを我慢しているけれど、普段とは違うその雰囲気に、翔奏は俺みたいに嘘で笑ったりできないのだろう。
それだけ翔奏は、正直に想いを歌にぶつけてきた。
「……俺、今日、前住んでた田舎に行ったんだ。覚えてるだろう?」
「あぁ」
俺はやっぱりその話かと、目を逸らしてきたことがついにきたと確信した。もう逃げられない。手に力が入らなくて、スマホが今にも落ちてしまいそうだ。
胸が締め付けられるような思いで、俺はただ翔奏の言葉を待った。
「それでさあ、お前、千歳深桜って覚えてるか?」
俺は翔奏から深桜の名前が出た途端、声が出なくなって、相槌を返すことすらできなくなった。
喉が渇いて、背中を流れる冷や汗が妙に生々しくて気持ち悪い。頭にじんわりとした痛みが、広がっていく。
「お前どうして黙ってた! 俺がちぃのこと、ずっと考えてるの知ってただろう。なのにどうして黙ってた!?」
我慢していたものを、全部吐き出すような翔奏の声が俺の頭に響いて、余計に痛みが増した。翔奏の言う通りだ。俺はどうして今まで黙っていたのだろう。
嘘を吐いてまで、どうして翔奏から深桜を引き離したんだろう。
後悔という鎖がじんわり解けて解放されるみたいに、心の中に少しずつ渦巻いていく。
「俺は、ずっと苦しかった。ちぃが、もうこの世にいないって思ってたんだ。それをずっと智歌は否定しなかった。俺が思っているように、智歌もそういうふうに振舞った。
何でだよ。何で知っててそういうことができるんだよ!!」
翔奏の悲痛な声が、心の中にずしんとのしかかってくる。
そんなことはあり得ないと、確信めいた気持ちがむしばんでいく。
俺は諦めたようにため息をついて、翔奏に電話をかけた。
もしかしたら忙しくて、もう電話に出れないかもしれない。そんなことを軽く考えたけど、その思いとは裏腹に翔奏はすぐに電話に出た。
「ごめん。ちょっといろいろあって遅くなった。今大丈夫か?」
いつもの明るい声を装って、俺は切り出した。心の中は重いはずなのに、嘘を重ねるごとに嘘がうまくなっているみたいだ。
「あぁ。今日、休暇とったから」
「そうか。それで何?」
翔奏の声はとても沈んでいて、小さかった。怒りを我慢しているけれど、普段とは違うその雰囲気に、翔奏は俺みたいに嘘で笑ったりできないのだろう。
それだけ翔奏は、正直に想いを歌にぶつけてきた。
「……俺、今日、前住んでた田舎に行ったんだ。覚えてるだろう?」
「あぁ」
俺はやっぱりその話かと、目を逸らしてきたことがついにきたと確信した。もう逃げられない。手に力が入らなくて、スマホが今にも落ちてしまいそうだ。
胸が締め付けられるような思いで、俺はただ翔奏の言葉を待った。
「それでさあ、お前、千歳深桜って覚えてるか?」
俺は翔奏から深桜の名前が出た途端、声が出なくなって、相槌を返すことすらできなくなった。
喉が渇いて、背中を流れる冷や汗が妙に生々しくて気持ち悪い。頭にじんわりとした痛みが、広がっていく。
「お前どうして黙ってた! 俺がちぃのこと、ずっと考えてるの知ってただろう。なのにどうして黙ってた!?」
我慢していたものを、全部吐き出すような翔奏の声が俺の頭に響いて、余計に痛みが増した。翔奏の言う通りだ。俺はどうして今まで黙っていたのだろう。
嘘を吐いてまで、どうして翔奏から深桜を引き離したんだろう。
後悔という鎖がじんわり解けて解放されるみたいに、心の中に少しずつ渦巻いていく。
「俺は、ずっと苦しかった。ちぃが、もうこの世にいないって思ってたんだ。それをずっと智歌は否定しなかった。俺が思っているように、智歌もそういうふうに振舞った。
何でだよ。何で知っててそういうことができるんだよ!!」
翔奏の悲痛な声が、心の中にずしんとのしかかってくる。
