きっと講義なのだろう。結局、智歌は電話にでることはなく、俺はそのまま家に帰った。
だいたい講義が終わったくらいに電話があるだろうと待っていたのに、智歌から電話はかかってこなかった。
沖浦さんも俺が休暇中ということで、電話を控えているのだろう。
でも何も手につかない今、沖浦さんでもいいから電話をならしてほしかった。
こんな気持ちで明日行われる小説大賞の授賞式に参加できるだろうか。
でもそんな甘いこと言っていられない。参加して、ちゃんと選評を言わなければいけない。不安に思いながらも、俺はじっと彼からの電話を待ち続けた。
それから夕陽も沈み、夜の八時頃だろうか。何もせずにただ時間がたつのを持て余して過ごしていたら、電話がなった。
俺はさっとスマホを取り、画面を見た。
映し出された画面に表示された名前は、智歌だった。
♮
俺は一人、講義室でピアノを弾いていた。今日は何かの用事とかで、深桜は来なかった。俺にとってもその方がありがたかった。講義中に震えたスマホをちらっと見て、相手が翔奏だったことに、俺は氷を直接当てられたみたいな冷たさが、心の中に迸ったからだ。
たぶん翔奏は気づいたんだろう。深桜が生きているということに……。
何となくそう直感した俺は、何度も震えていたにも関わらず、講義が終わっても無視し続けた。ただ単に翔奏と話したくなかったからだ。
メールもなしに、いきなり電話をしてくるなんてただ事ではない。身内の不幸とかいう考えが頭を掠めたけど、それだったら翔奏以外からも連絡がくるはずだ。
でもこんなに早く翔奏が辿りつくとは、思ってもいなかった。
適当に何曲か弾いて、夕陽が辺りをオレンジ色に染め始めた頃、俺はその場を後にした。
全てを話さないといけない時がついにきたのだ。覚悟していたけれど、いざそうなるとくよくよ悩んでしまう。
家に帰って、一人でまたピアノを弾いても、その重苦しい気持ちは拭い去ることはできなかった。俺は日が沈むまで、何もせずにぼんやりと部屋を眺めた。
全てを話すにしても、どこまで話すべきなのだろうか。
俺は少なからず、翔奏を親友だと思っているのに、重ねてきた嘘が多すぎて、もうどうしたらいいのか分からない。こんな嘘だらけの俺なんて、親友なんて呼べないのかもしれない。
とりあえず、深桜のことを話さなければいけないだろう。
だいたい講義が終わったくらいに電話があるだろうと待っていたのに、智歌から電話はかかってこなかった。
沖浦さんも俺が休暇中ということで、電話を控えているのだろう。
でも何も手につかない今、沖浦さんでもいいから電話をならしてほしかった。
こんな気持ちで明日行われる小説大賞の授賞式に参加できるだろうか。
でもそんな甘いこと言っていられない。参加して、ちゃんと選評を言わなければいけない。不安に思いながらも、俺はじっと彼からの電話を待ち続けた。
それから夕陽も沈み、夜の八時頃だろうか。何もせずにただ時間がたつのを持て余して過ごしていたら、電話がなった。
俺はさっとスマホを取り、画面を見た。
映し出された画面に表示された名前は、智歌だった。
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俺は一人、講義室でピアノを弾いていた。今日は何かの用事とかで、深桜は来なかった。俺にとってもその方がありがたかった。講義中に震えたスマホをちらっと見て、相手が翔奏だったことに、俺は氷を直接当てられたみたいな冷たさが、心の中に迸ったからだ。
たぶん翔奏は気づいたんだろう。深桜が生きているということに……。
何となくそう直感した俺は、何度も震えていたにも関わらず、講義が終わっても無視し続けた。ただ単に翔奏と話したくなかったからだ。
メールもなしに、いきなり電話をしてくるなんてただ事ではない。身内の不幸とかいう考えが頭を掠めたけど、それだったら翔奏以外からも連絡がくるはずだ。
でもこんなに早く翔奏が辿りつくとは、思ってもいなかった。
適当に何曲か弾いて、夕陽が辺りをオレンジ色に染め始めた頃、俺はその場を後にした。
全てを話さないといけない時がついにきたのだ。覚悟していたけれど、いざそうなるとくよくよ悩んでしまう。
家に帰って、一人でまたピアノを弾いても、その重苦しい気持ちは拭い去ることはできなかった。俺は日が沈むまで、何もせずにぼんやりと部屋を眺めた。
全てを話すにしても、どこまで話すべきなのだろうか。
俺は少なからず、翔奏を親友だと思っているのに、重ねてきた嘘が多すぎて、もうどうしたらいいのか分からない。こんな嘘だらけの俺なんて、親友なんて呼べないのかもしれない。
とりあえず、深桜のことを話さなければいけないだろう。
