きっと彼女はこの村の外から来た子だ。その証拠に田舎で過ごした雰囲気ではなく、都会に慣れたような雰囲気を醸し出していた。だからだろう。都会の子というだけで珍しく、二人揃って憧れを抱いたのだ。村の女の子を見飽きていた俺たちには、目の前に佇むその子が新鮮でかわいく見えてしかたがなかった。
それが好意に変わるのなんて、長い時間はいらない。きっとこれが一目惚れというのだろう。町を眺める女の子の後ろ姿だけで、恋に落ちるなんてどうかしてる。
生い茂る草に混ざる様にローズマリーの草が風に揺れ、紫色に染まった桔梗と撫子の花がところどころに咲き乱れている。
そこに誰が植えたのか分からないけど、一本だけ李の木が立っていた。そしてその近くに一つだけ太陽に向かって伸びるグラシオラスが咲いている。
見慣れた風景に、ただそこに女の子が立っているだけで、その草花はその子がいるから咲いているように見えてしまう。
小学校の自由研究で調べたこの草花には、ちょっとした思い入れがあるにも関わらず、俺たちは花よりもその子にばかり目を向けていた。
「あなたたちは? ここら辺に住んでる子?」
俺たちはどれだけそうやって彼女を見ていただろう。俺たちに気づいた彼女が振り返るまで、俺たちは彼女を眺めていた。
「えっ? あっうん。俺たちこの村に住んでて、ここによく来るんだ」
先に答えたのは智歌だったけれど、言葉がまとまっておらず、ぎこちなかった。彼女に負けないように標準語で答えたつもりだろうけど、言葉になまりが残っている。
「やっぱりそうなんだね。お邪魔しちゃってごめんなさい」
『「全然そんなことない!」』
智歌と俺の声が重なって、恥ずかしくなった。でもそれが何だかおかしくて、三人ともそれぞれ笑った。
「君、ここの子じゃないよね? どうしてここに?」
「……昨日ひいおじいちゃんのお葬式だったの」
「えっ?!」
俺たちは彼女の口から零れた言葉に、二人揃って驚いた。確かに一昨日、母親たちはどこかの家の通夜に行くと言っていた。それは智歌の家も同じで、俺たちは二人揃ってそれぞれの家の留守番をしていたのだ。
「そんなにびっくりしなくてもいいよ。私全然知らないし、ひいおじいちゃんと会ったこともないみたいなの。それで私、家にいてもつまらないし、お母さんたちは忙しそうだから家から出てきたの」
「……そうなんだ」
それが好意に変わるのなんて、長い時間はいらない。きっとこれが一目惚れというのだろう。町を眺める女の子の後ろ姿だけで、恋に落ちるなんてどうかしてる。
生い茂る草に混ざる様にローズマリーの草が風に揺れ、紫色に染まった桔梗と撫子の花がところどころに咲き乱れている。
そこに誰が植えたのか分からないけど、一本だけ李の木が立っていた。そしてその近くに一つだけ太陽に向かって伸びるグラシオラスが咲いている。
見慣れた風景に、ただそこに女の子が立っているだけで、その草花はその子がいるから咲いているように見えてしまう。
小学校の自由研究で調べたこの草花には、ちょっとした思い入れがあるにも関わらず、俺たちは花よりもその子にばかり目を向けていた。
「あなたたちは? ここら辺に住んでる子?」
俺たちはどれだけそうやって彼女を見ていただろう。俺たちに気づいた彼女が振り返るまで、俺たちは彼女を眺めていた。
「えっ? あっうん。俺たちこの村に住んでて、ここによく来るんだ」
先に答えたのは智歌だったけれど、言葉がまとまっておらず、ぎこちなかった。彼女に負けないように標準語で答えたつもりだろうけど、言葉になまりが残っている。
「やっぱりそうなんだね。お邪魔しちゃってごめんなさい」
『「全然そんなことない!」』
智歌と俺の声が重なって、恥ずかしくなった。でもそれが何だかおかしくて、三人ともそれぞれ笑った。
「君、ここの子じゃないよね? どうしてここに?」
「……昨日ひいおじいちゃんのお葬式だったの」
「えっ?!」
俺たちは彼女の口から零れた言葉に、二人揃って驚いた。確かに一昨日、母親たちはどこかの家の通夜に行くと言っていた。それは智歌の家も同じで、俺たちは二人揃ってそれぞれの家の留守番をしていたのだ。
「そんなにびっくりしなくてもいいよ。私全然知らないし、ひいおじいちゃんと会ったこともないみたいなの。それで私、家にいてもつまらないし、お母さんたちは忙しそうだから家から出てきたの」
「……そうなんだ」
