俺に気づいていないのか、深桜は下を向いたまま、手にぎゅっと力を込めて、必死に言葉を選んでいた。
でも、その先が恥ずかしくて言葉が詰まり、口に出すことができない。この光景は、他の女の子と付き合う前に、よく見てきたものと同じだ。
好きなやつに、想いを伝えようと頑張っている姿だ。
俺はふらついた足に力を込め、彼女に飛びこむように深桜を抱きしめた。
「深桜。よかった。……帰ってきて」
「先輩」
言葉はそれ以上いらなかった。
お互いの鼓動は同じくらい速く音を鳴らしているのは、二人とも分かっている。
その理由も、お互いの気持ちも、言葉なんてものは必要なかった。
深桜は、そっと俺の胸元をぎゅっと掴んだ。もう離さないと誓うように、俺もぎゅっと腕に力を込める。
俺の胸元で呼吸をする彼女の口を塞ぐのに、迷いも不安もなかった。お互い初めてのせいか、歯と歯が軽くぶつかったけど、そんなことはどうでもよかった。
深桜が俺を選んでくれたことが嬉しくて、ずっとこうしていたかった。
今まで、どんな子と付き合っても、手を握る程度でしかなく、こんなことしたいとも思わなかった。向こうからせがまれても、断り続けた。
そして「本当は自分は想われていない。好かれていない」と気づくと、女の子たちは別れ話を持ち出し、俺はそれに全て応えてきた。
そんなことを繰り返していたら、変な噂がたったけど、気にしなかった。
別れを告げられるのも、振られるのも痛くて苦しいのは、俺がよく分かっている。俺は誰よりも、好きな相手から拒絶されるのを恐れていたからだ。
だから、一人を除いては、俺から別れ話を持ち出したこともなければ、振ったこともない。
深桜の傍にいたくて、何も言えず嘘を重ね、ずっとびくびくと怯えていた俺には、そうすることしかできなかった。
どれくらい彼女の唇に触れていただろう。
彼女の唇は想像以上に柔らかくて、本当に重ねているか分からなくなる。
でも、そっと薄く目を開くと、彼女のぎゅっと閉じられた目が間近にあって、俺はまた目を閉じた。
苦しいのか、微かに彼女の声が漏れた。
でも、唇を離すことはせず、重ねたままでいた。深桜も嫌がっている感じではない。
嘘を重ねてきた俺の唇を受け止めてくれる。
俺は、そっと片手で深桜の頬に触れた。
でも、その先が恥ずかしくて言葉が詰まり、口に出すことができない。この光景は、他の女の子と付き合う前に、よく見てきたものと同じだ。
好きなやつに、想いを伝えようと頑張っている姿だ。
俺はふらついた足に力を込め、彼女に飛びこむように深桜を抱きしめた。
「深桜。よかった。……帰ってきて」
「先輩」
言葉はそれ以上いらなかった。
お互いの鼓動は同じくらい速く音を鳴らしているのは、二人とも分かっている。
その理由も、お互いの気持ちも、言葉なんてものは必要なかった。
深桜は、そっと俺の胸元をぎゅっと掴んだ。もう離さないと誓うように、俺もぎゅっと腕に力を込める。
俺の胸元で呼吸をする彼女の口を塞ぐのに、迷いも不安もなかった。お互い初めてのせいか、歯と歯が軽くぶつかったけど、そんなことはどうでもよかった。
深桜が俺を選んでくれたことが嬉しくて、ずっとこうしていたかった。
今まで、どんな子と付き合っても、手を握る程度でしかなく、こんなことしたいとも思わなかった。向こうからせがまれても、断り続けた。
そして「本当は自分は想われていない。好かれていない」と気づくと、女の子たちは別れ話を持ち出し、俺はそれに全て応えてきた。
そんなことを繰り返していたら、変な噂がたったけど、気にしなかった。
別れを告げられるのも、振られるのも痛くて苦しいのは、俺がよく分かっている。俺は誰よりも、好きな相手から拒絶されるのを恐れていたからだ。
だから、一人を除いては、俺から別れ話を持ち出したこともなければ、振ったこともない。
深桜の傍にいたくて、何も言えず嘘を重ね、ずっとびくびくと怯えていた俺には、そうすることしかできなかった。
どれくらい彼女の唇に触れていただろう。
彼女の唇は想像以上に柔らかくて、本当に重ねているか分からなくなる。
でも、そっと薄く目を開くと、彼女のぎゅっと閉じられた目が間近にあって、俺はまた目を閉じた。
苦しいのか、微かに彼女の声が漏れた。
でも、唇を離すことはせず、重ねたままでいた。深桜も嫌がっている感じではない。
嘘を重ねてきた俺の唇を受け止めてくれる。
俺は、そっと片手で深桜の頬に触れた。