彼女の言う通り、俺をつけてきて、ずっと草むらの陰から見ていたのだろう。
でも俺を止めずに、見守ってくれたのは、彼女の優しさだろうか。
「全く! ファンやマスコミに見られでもしたらどうするの? 自覚はあったみたいだけど、そんなことになれば、あなたどうなると思ってるの?!」
「すみません。でも俺見られても構わないって思ってたし」
ぽつりと呟いた俺の言葉に、沖浦さんの声が覆いかぶさる。
「何ですって!? 反省の色が見られないわね!」
「だっ、だって沖浦さん言ってたじゃないですか! もし、本当に昔出逢った女の子なら逢ってもいいって」
「それは私を通してからの話でしょ。もっと自分自身のことを自覚しなさい」
必死に言い訳してみたけれど、火に油を注いでしまったみたいだ。言い訳を重ねる度に、沖浦さんの眉はどんどん吊り上っていってしまった。
「すみません。でももうしませんから」
「当り前よ! ネットで拡散でもされたら、たまったものではないわよ」
最後にぴしゃりと言い切る沖浦さんに、俺はまた頭を下げた。
でも、何となくこうなるって分かっていたみたいに、彼女は大きくため息を吐いて、弟を心配する姉のような眼差しを俺に向けた。
「じゃあもういいの? 何となくだけど、私はあなたが、あんな簡単に諦めるとは思ってなかったけど」
「えぇ、ちゃんと言えたから大丈夫です。それに、智歌にはもう敵わないって思いました。俺はずっと、昔のちぃを好きでいたんです。でも、智歌は千歳深桜を好きだった。昔の彼女ではなくて。一緒にいた時間が、彼の方が長かったから仕方ないかもしれないけど、俺はあの時、彼女を救わずに逃げたから。……最初から負けてたんですよ。だから、今から今の彼女を好きになっても、もう追いつけないんです。彼女のこと思い出してばかりいた俺には……。なんか上手く言えませんけど」
照れたように笑ったら、沖浦さんは真剣な眼差しで空を見上げた。
その視線はどこか、虚しさを含んでいて、遠くを見ているようだった。
「上手く言う必要はないわ。人って本当の気持ちは、なかなか言い出せないものだから」
「それどういう意味ですか?」
俺は小首を傾げると、沖浦さんは、その問いかけに答えるつもりはないのか、またよく分からないことを口にした。
でも俺を止めずに、見守ってくれたのは、彼女の優しさだろうか。
「全く! ファンやマスコミに見られでもしたらどうするの? 自覚はあったみたいだけど、そんなことになれば、あなたどうなると思ってるの?!」
「すみません。でも俺見られても構わないって思ってたし」
ぽつりと呟いた俺の言葉に、沖浦さんの声が覆いかぶさる。
「何ですって!? 反省の色が見られないわね!」
「だっ、だって沖浦さん言ってたじゃないですか! もし、本当に昔出逢った女の子なら逢ってもいいって」
「それは私を通してからの話でしょ。もっと自分自身のことを自覚しなさい」
必死に言い訳してみたけれど、火に油を注いでしまったみたいだ。言い訳を重ねる度に、沖浦さんの眉はどんどん吊り上っていってしまった。
「すみません。でももうしませんから」
「当り前よ! ネットで拡散でもされたら、たまったものではないわよ」
最後にぴしゃりと言い切る沖浦さんに、俺はまた頭を下げた。
でも、何となくこうなるって分かっていたみたいに、彼女は大きくため息を吐いて、弟を心配する姉のような眼差しを俺に向けた。
「じゃあもういいの? 何となくだけど、私はあなたが、あんな簡単に諦めるとは思ってなかったけど」
「えぇ、ちゃんと言えたから大丈夫です。それに、智歌にはもう敵わないって思いました。俺はずっと、昔のちぃを好きでいたんです。でも、智歌は千歳深桜を好きだった。昔の彼女ではなくて。一緒にいた時間が、彼の方が長かったから仕方ないかもしれないけど、俺はあの時、彼女を救わずに逃げたから。……最初から負けてたんですよ。だから、今から今の彼女を好きになっても、もう追いつけないんです。彼女のこと思い出してばかりいた俺には……。なんか上手く言えませんけど」
照れたように笑ったら、沖浦さんは真剣な眼差しで空を見上げた。
その視線はどこか、虚しさを含んでいて、遠くを見ているようだった。
「上手く言う必要はないわ。人って本当の気持ちは、なかなか言い出せないものだから」
「それどういう意味ですか?」
俺は小首を傾げると、沖浦さんは、その問いかけに答えるつもりはないのか、またよく分からないことを口にした。