相手の男の子はもちろん、千歳さん以外の女の子たちは同じ大学だけど、全然面識のない人たちばかりだった。
男の子の方はほとんどが一つ年上の人で、同い年の子は一人しかいなかった。サークルもばらばらだけど、みんな何かしらの共通点があり、仲はいいらしい。
マイクの歌声に負けないくらいの声で話す子たちの隅っこで、私は今日何杯目かになるウーロン茶を一口飲んだ。
「ねぇ。深桜ちゃんは歌わないの?」
久しぶりに智歌先輩以外の男の人から名前で呼ばれて、どきりとして、緊張が走った。
きょとんとしていると、目の前にいる彼はすっと私に屈託のない笑みを浮かべて、リモコンを差し出した。
「ごめんなさい。私、歌うの苦手だから」
歌うのは嫌いではない。どちらかと言えば好きな方だ。でも初対面の人の前で歌うのは恥ずかしいから、カラオケに行ってもいつも歌いだせず、みんなの歌を聞いたり、話したりしていた。
「そうなんだ。う~んとじゃあどんな曲聴くの?」
彼は私が断っても嫌な顔一つせず、逆にぐいぐい寄って来た。普通断ったら残念がられたり、ちょっと頬を膨れられたりしてきたから、何だか以外でちょっと驚いた。
「ちょっと幹事同士で話してくるけど、何かあったら、すぐに言ってね」
隣りに座っていた千歳さんが小声でそう囁くと、彼女はドア近くで幹事の男の子と話し始めた。でもちらっと私の方を確認してくれて、何かあったらすぐに来れるようにスタンバイしてくれているようだ。
でも千歳さんが座っていた席に、すかさず彼が座ってきた。
あまり気は進まないけれど、無碍に突き放すこともできず、人見知りを隠すみたいに笑顔を浮かべた。
ひとまずここは、適当に乗り切るしかない。
「いろいろ聴きますよ。洋楽も有名なやつは聴いたりしますし」
「へぇ~そうなんだ。誰が好きとかあるの?」
「……藤沢翔奏です」
「マジ? 女子って大抵好きだよね。あっじゃあ俺、次歌おうかな~」
軽いノリでそう返され、心の中でため息が漏れた。私はこういう風に言われるのは、好きじゃない。きっと心から翔奏が好きな人たちはみんな嫌だろう。
本当に好きなのに、どうしてこんな風に軽く言われるのだろう。人気なのは分かるし、女性のファンが多いのも知っている。
男の子の方はほとんどが一つ年上の人で、同い年の子は一人しかいなかった。サークルもばらばらだけど、みんな何かしらの共通点があり、仲はいいらしい。
マイクの歌声に負けないくらいの声で話す子たちの隅っこで、私は今日何杯目かになるウーロン茶を一口飲んだ。
「ねぇ。深桜ちゃんは歌わないの?」
久しぶりに智歌先輩以外の男の人から名前で呼ばれて、どきりとして、緊張が走った。
きょとんとしていると、目の前にいる彼はすっと私に屈託のない笑みを浮かべて、リモコンを差し出した。
「ごめんなさい。私、歌うの苦手だから」
歌うのは嫌いではない。どちらかと言えば好きな方だ。でも初対面の人の前で歌うのは恥ずかしいから、カラオケに行ってもいつも歌いだせず、みんなの歌を聞いたり、話したりしていた。
「そうなんだ。う~んとじゃあどんな曲聴くの?」
彼は私が断っても嫌な顔一つせず、逆にぐいぐい寄って来た。普通断ったら残念がられたり、ちょっと頬を膨れられたりしてきたから、何だか以外でちょっと驚いた。
「ちょっと幹事同士で話してくるけど、何かあったら、すぐに言ってね」
隣りに座っていた千歳さんが小声でそう囁くと、彼女はドア近くで幹事の男の子と話し始めた。でもちらっと私の方を確認してくれて、何かあったらすぐに来れるようにスタンバイしてくれているようだ。
でも千歳さんが座っていた席に、すかさず彼が座ってきた。
あまり気は進まないけれど、無碍に突き放すこともできず、人見知りを隠すみたいに笑顔を浮かべた。
ひとまずここは、適当に乗り切るしかない。
「いろいろ聴きますよ。洋楽も有名なやつは聴いたりしますし」
「へぇ~そうなんだ。誰が好きとかあるの?」
「……藤沢翔奏です」
「マジ? 女子って大抵好きだよね。あっじゃあ俺、次歌おうかな~」
軽いノリでそう返され、心の中でため息が漏れた。私はこういう風に言われるのは、好きじゃない。きっと心から翔奏が好きな人たちはみんな嫌だろう。
本当に好きなのに、どうしてこんな風に軽く言われるのだろう。人気なのは分かるし、女性のファンが多いのも知っている。