未だに初めて出来た彼氏に毎日ドキドキされっ放しの私。
彼と知り合って19年。彼氏彼女という関係になってから2年。
それでも四六時中ドキドキしているその理由は──……
『おい、起きろ』
「……」
『いつまで寝ているんだ』
「……ん…? ……リュウ?」
『そうだ、オレだ。オレが起こしてるのに起きないのか』
「……んんっ」
『そうか、起きないか。それなら』
「………?!」
(きゅ、急に唇に何か──!!)
「どうだ! 朝っぱらから濃厚キス攻撃だ!」
「ま、雅生?! なんで──」
「深夜に来た。寝てたから起こさない様にベッドに潜り込んだ」
「……」
(じゃあ先刻耳元で囁かれた大好きなリュウの声は夢じゃなくて雅生の生声だったの?!)
そう。彼に対していつまで経ってもドキドキする理由のひとつはアニメオタクである私の推しキャラの声を彼が担当しているから。
「あー……朝から心臓に悪い~~」
あまりにも強烈な寝起きドキドキにひとり暮らしの部屋の合鍵を渡してしまったことを少しだけ後悔する。
「あぁ? 何いってんだよ。こんなアニメオタクちゃんには夢のよーな目覚め方、彼氏が声優ならではの特権だぞ」
「……まぁ…そうかもね」
目の前でさも当たり前のように私が作った朝食を頬張っているのは初めて出来た彼氏、南海雅生。職業は今をときめく声優だ。
元々私、鈴村紗都と雅生は小中高校と同じ学校で特に小学校の時は6年間同じクラスだった。
故に幼馴染──というか腐れ縁のようなもので長年友だち関係にあった。
そんな彼から高校3年生の時、突然告白された。『おまえのことずっと好きだった。だから付き合ってくれ』と。
その告白で彼が私を恋愛対象として見ていたことを知ってしまい初めて彼に対してときめいてしまった。