がしっと肩を抱きながら調子よく修司が話すと、生徒会長はまんざらでもない様子で頷いた。
「まあ、そうですよね。……ここだけの話、金庫の鍵って開けっ放しなんですよ」
「マジで?」
「いえ。校長先生が留守にするときには締めてるだろうけど。頻繁に開けなきゃならないことがわかってるときには、いちいち施錠しないみたいです。僕らが何か取りに行っても、開いてるぞーなんて軽い感じで。試験問題制作期間なんかは、僕らも立ち入り禁止になるからちゃんとしてるんでしょうけど」

「つうことは、けっこう誰でも持ち出せたりする……?」
「あ、でも。金庫の鍵が開けっ放しなんてここだけの話ですからね!」
「わあってる、わあってる」
「優勝旗がないって気づいたのは昨日なんだよね?」
「みたいですね」
 朱美の質問にも生徒会長は生真面目な表情で答える。
「卒業アルバム用の部活ごとの記念写真を撮ったときには、確実にあったらしいですけど、それから確認してなかったんで」

「ケースの中は空っぽだったって」
「そういうことです。だから僕たちも金庫の中を見てはいてもなくなってるなんて思わなくて」
「ケースってどんなの……?」
 恐る恐る横から郁子が尋ねると、これにも生徒会長はきちんと答えてくれた。
「えーと、トランクケースっていうのかな……。吹奏楽部の楽器が入ってるみたいな。そんなに大きくないやつで。今うちにある優勝旗はバスケ部と卓球部のと……ケースはみっつありましたよ」

「その中からバスケの大会のだけが抜き取られてた?」
「そういうことですね。調べたら卓球部のふたつはちゃんとあったらしいです」
「盗まれたってことなのかなあ」
「そうとしか思えないだろ。中身だけ抜いてくなんてすぐにバレないようにするためだろ?」
「そうですねえ」

「卒業前に部の奴が手入れするとかって、いつもやってることなのか?」
「あ、それは生徒会の方からお願いしてるんですよ。返還までの間に染みを作ったり破損があったりすると弁償しなくちゃならないんで」
「つまり今回も生徒会からバスケ部に通達したってことか?」
「時期的にそうですね。それでバスケ部の方でそれなら卒業生でやろうってことになったんだと思うんですよ」