「とにかく! とにかく捜そうよ」
 修司と朱美が同時に目を上げて郁子を見る。
「どうしてなくなっちゃったかとか、わからないけど……優勝旗、捜してみようよ。……わたし、捜してみる!」
「捜すって……ちょっと待ちなよ、郁子」
「だって達也くんが犯人にされちゃう」
「あー、わかった。わかったから、ちょっといったん考えよう」

 どうどうと朱美に肩を叩かれたが郁子の気持ちは収まらない。文化祭のときと同じ。動かずにはいられないあの気持ち。
「捜すっつっても、学校の中を? ここにあるとは限らないよね?」
「あると思う。なんとなく」
「はあ?」
 いつにない郁子の無茶苦茶ぶりに朱美は目を丸くして二の句が継げなくなったようだ。

 地べたに座り込んだまま二人の様子を見ていた修司が噴き出す。
「修司い、笑ってないでなんとか言いなよ」
「そうだな……」
 ゆっくり立ち上がって歩み寄ってきた修司は、ぽんと郁子の頭に手をのせる。
「おかげで頭が冷えた」
 硬い表情の中にも少し余裕が出たようだ。

「まずはなくなったもんを見つけようって方向は間違っちゃいない。窃盗被害を出される前にな」
 唇の端を少し上げて修司が言う。
「少し、調べてみようぜ」
「うん!」
「そうだね」
 力強く頷く郁子に目を白黒させながら、朱美も同意した。



「優勝旗は校長室の金庫にあった。だよな」
「そうそう。あの校長の机の後ろにあるデカいヤツだよね」
「わたし見たことない……」
「そら郁子はあたしらと違って説教に呼び出されることもなかったろうからね」
「そう考えると校長室に入れる人なんて限られてるんじゃない?」
「確かに」

 校長室や職員室、相談室の並びの廊下は事件のせいか騒がしかったので、校舎の外側から校長室の窓を窺いながら三人は話していた。
「生徒会の連中は出入り多いぜ。行事に必要なものとか書類も金庫の中らしいからな」
 仕切り屋の修司は、大きな行事に絡むことが多かったので学校のことに詳しかったりする。

 それなら生徒会のメンバーに話を聞いてみようと生徒会室に移動した。三年生はとっくに引退し、今の生徒会長は二年生だ。
「優勝旗のことなら聞いてますけど、僕ら関係ないですよ」
「わあってるって。詳しい様子を聞きたいだけだよ。校長室のことなんか、出入り自由のおまえらエリートしかわからないだろ?」