夏でも山の中は冷え込む。特に約3000mも登ればな。初めての登山だよ。
休憩を定期的に取るも、夜の登山は本当に危険すぎる。これも君が僕に与えた試練?
ようやく重たい脚をなんとか上げて進み、平地へと、目的地へと着いた。
「一緒だ―――――――――」
コピーして持ってきた七年前に見た写真と、目の前の光景を照合させた。瓜二つとも言える透き通る湖。周囲を囲む利鳥豊かなカーテン。そして…………
夜空に満遍となく広がった、オーロラのような天の川。
本当に綺麗だ。来た甲斐がある。
ここまで来るのに、7年。いや合わせて9年だ。九年かかってようやくここへと訪れるチャンスができたよ。春の桜も、秋の紅葉も全て君を見に行った。それでも本当に君にはまだ会えていない。
ほんと、君のワガママのせいだからね? わかってる?
なんだかんだ楽しんでたくせに――――――――なんて彼女からの幻聴が聞こえたような気がした。
僕はこの9年苦労にしか絶えれなかったよ。
バイトを始めてある程度資金をため、そして今仕事としてようやく生活費も苦しまないよう安泰できて溜め切った。
今年で二十四になるよ。大学卒業した今、君のように人を助ける職業へと進もうと一時期考えた。消防士の試験を受けてこんな虚弱なりにも鍛えて、合格は貰ったんだけどやっぱり蹴っちゃった。兄のくせが移ったかな?
申しわけないとしかおもわなかったけど、やはりこの道は違う。
兄と二人でバイク屋を経営してるよ。数店舗店があるほど案外規模が大きいんだ。中にはバイクカフェもある。
最近は車みたいにハイブリッドの時代でね、君を乗せたようなアレは今は大人気なんだ。旧車ブームってやつ。大繁盛してて、経営も整備士も毎日が火の車だよ。
兄がたまに計簿ミスっちゃって、それで損害出そうなってほんと困ってさ。
あぁそう言えば、七年経った今この場に及んで、一つ君に文句を言おう。
あんなに自信満々にフランスフランスなんて言ってたから何日もかかって必死に模索したけど、フランスの【領】じゃないか。ほんとしっかりしてくれ。たまに抜けるところが懐かしく感じるよ。
折角その為に大学の時も、フランス語履修したのに。
僕がちゃんと調べてないのが、悪いって?
ほんと調子いい。じゃあこれも50:50にしておこう。
君のところに行く時、手土産ついでの笑い話になるな。
ここまで流石にバイクでは来れないよ。君なら本気でバイクで来いなんて言いそうだが…。
勿論飛行機で来た。香港やらシンガポールやら乗り継ぎは大変だし、でも案外思っている以上フライトが退屈で仕方なかった。君ならすぐ飽きそう。僕もすぐ飽きた。
写真の通りの距離を計算し、近くの茂みにレジャーシートを敷きそこでまず、星を眺める事にした。
オーロラから宇宙人でも降りてきそうなくらい、ファンタジーと幻想で視界に収まりきらないほど溢れている。
兄は大学卒業してすぐに玲奈さんにプロポーズしに行った。先週結婚式挙げたばかりなんだ。二人とも変わったと思たけど兄は相変わらずだったよ。玲奈さんのウェディングドレス姿見てまた猿みたいに顔真っ赤にしてたよ。タキシードよりも表情が目立ってみんな笑ってた。今度はちゃんと笑ったよ。君のようにね。
その顔しっかり収めてきた。
収めると言えば君に是非見てほしいのがあると、呟き背負ってきたリュックから取り出した。
実はね、バイク以外にも趣味というか、そんなの見つけた。
カメラだ。一眼レフ。ちょっと奮発していいのを買ったんだ。形から入るようにも見えるが、この場に来るならこれが妥当だと考えた。
君との撮ったあの写真を見て、いつ日かそう思いついたんだ。
一度はこのファインダーでも君を覗いて見たかったよ。
だから今から、ここに来る君を、撮るね。
観測を辞め、カメラの機材を淡々と準備する中、先にアレから見せようと、首もとに入れたネックレスを外し、そのまま夜空へと掲げる。
わずかに天の川に反映するような気がした。
ふと何かを感じ、咄嗟に服の上に付けなおし、カメラを持つ。
さぁ、特等席でご覧あれ
今度はカメラを空へと向け、構え、何もかも全てそれに集中を向けた。
一瞬を逃がさない、それを。
きた――――――
ファインダーに移る画面の中、右上から君がやってきた。
真ん中を狙い、指が震えながらも、シャッターを切る。
その同時に、
君はきっと今でもここがフランスとでも思っていそうだからこう言うよ。
シャッターを押す瞬間のその空白とした世界へ向けて言葉を放った。
Je t’aime pour toujours.中野
そして、
生まれてきてくれて、ありがとう。和葉。
休憩を定期的に取るも、夜の登山は本当に危険すぎる。これも君が僕に与えた試練?
ようやく重たい脚をなんとか上げて進み、平地へと、目的地へと着いた。
「一緒だ―――――――――」
コピーして持ってきた七年前に見た写真と、目の前の光景を照合させた。瓜二つとも言える透き通る湖。周囲を囲む利鳥豊かなカーテン。そして…………
夜空に満遍となく広がった、オーロラのような天の川。
本当に綺麗だ。来た甲斐がある。
ここまで来るのに、7年。いや合わせて9年だ。九年かかってようやくここへと訪れるチャンスができたよ。春の桜も、秋の紅葉も全て君を見に行った。それでも本当に君にはまだ会えていない。
ほんと、君のワガママのせいだからね? わかってる?
なんだかんだ楽しんでたくせに――――――――なんて彼女からの幻聴が聞こえたような気がした。
僕はこの9年苦労にしか絶えれなかったよ。
バイトを始めてある程度資金をため、そして今仕事としてようやく生活費も苦しまないよう安泰できて溜め切った。
今年で二十四になるよ。大学卒業した今、君のように人を助ける職業へと進もうと一時期考えた。消防士の試験を受けてこんな虚弱なりにも鍛えて、合格は貰ったんだけどやっぱり蹴っちゃった。兄のくせが移ったかな?
申しわけないとしかおもわなかったけど、やはりこの道は違う。
兄と二人でバイク屋を経営してるよ。数店舗店があるほど案外規模が大きいんだ。中にはバイクカフェもある。
最近は車みたいにハイブリッドの時代でね、君を乗せたようなアレは今は大人気なんだ。旧車ブームってやつ。大繁盛してて、経営も整備士も毎日が火の車だよ。
兄がたまに計簿ミスっちゃって、それで損害出そうなってほんと困ってさ。
あぁそう言えば、七年経った今この場に及んで、一つ君に文句を言おう。
あんなに自信満々にフランスフランスなんて言ってたから何日もかかって必死に模索したけど、フランスの【領】じゃないか。ほんとしっかりしてくれ。たまに抜けるところが懐かしく感じるよ。
折角その為に大学の時も、フランス語履修したのに。
僕がちゃんと調べてないのが、悪いって?
ほんと調子いい。じゃあこれも50:50にしておこう。
君のところに行く時、手土産ついでの笑い話になるな。
ここまで流石にバイクでは来れないよ。君なら本気でバイクで来いなんて言いそうだが…。
勿論飛行機で来た。香港やらシンガポールやら乗り継ぎは大変だし、でも案外思っている以上フライトが退屈で仕方なかった。君ならすぐ飽きそう。僕もすぐ飽きた。
写真の通りの距離を計算し、近くの茂みにレジャーシートを敷きそこでまず、星を眺める事にした。
オーロラから宇宙人でも降りてきそうなくらい、ファンタジーと幻想で視界に収まりきらないほど溢れている。
兄は大学卒業してすぐに玲奈さんにプロポーズしに行った。先週結婚式挙げたばかりなんだ。二人とも変わったと思たけど兄は相変わらずだったよ。玲奈さんのウェディングドレス姿見てまた猿みたいに顔真っ赤にしてたよ。タキシードよりも表情が目立ってみんな笑ってた。今度はちゃんと笑ったよ。君のようにね。
その顔しっかり収めてきた。
収めると言えば君に是非見てほしいのがあると、呟き背負ってきたリュックから取り出した。
実はね、バイク以外にも趣味というか、そんなの見つけた。
カメラだ。一眼レフ。ちょっと奮発していいのを買ったんだ。形から入るようにも見えるが、この場に来るならこれが妥当だと考えた。
君との撮ったあの写真を見て、いつ日かそう思いついたんだ。
一度はこのファインダーでも君を覗いて見たかったよ。
だから今から、ここに来る君を、撮るね。
観測を辞め、カメラの機材を淡々と準備する中、先にアレから見せようと、首もとに入れたネックレスを外し、そのまま夜空へと掲げる。
わずかに天の川に反映するような気がした。
ふと何かを感じ、咄嗟に服の上に付けなおし、カメラを持つ。
さぁ、特等席でご覧あれ
今度はカメラを空へと向け、構え、何もかも全てそれに集中を向けた。
一瞬を逃がさない、それを。
きた――――――
ファインダーに移る画面の中、右上から君がやってきた。
真ん中を狙い、指が震えながらも、シャッターを切る。
その同時に、
君はきっと今でもここがフランスとでも思っていそうだからこう言うよ。
シャッターを押す瞬間のその空白とした世界へ向けて言葉を放った。
Je t’aime pour toujours.中野
そして、
生まれてきてくれて、ありがとう。和葉。