オーロラに浮かぶ天の川―――――――そこで、本当の君に逢いに行く。


 これまで幾度もなく写真を好み、写真に好まれる愛されるよう常に何かを撮り続けてきた。いわば写真家というだろう。それが私の人生―――――いや信念だ。

 初めは小学三年次。二年前に他界した父親の日常の趣味から始まった。休日に撮り方次いでに家族でドライブしに、そこで何枚も何回も鍛錬を継いだ。そして感情移入までも―――――――。今は世界角国の名所や、誰も知らない秘境までと冒険家としても活動を続け、写真を撮り続けている。

 そして今回はここ、アフリカ西部、インド洋に浮かぶ小さな諸島の一つ。そこにある膨大とも言える景色をこの十数年愛用の年期あるカメラに収める。

 暗闇でぬかるんだ険しい山道を上り詰め、最初に視界に入ってきた光がとても優しかった。茂みの間から見えるそこは情報通りの光景。静かな台地、透き通る湖。そしてオーロラに浮かぶ天の川。その全てが完璧とも言える絶景は今までの中でも頂点に屈する。

 早速取り掛かろう。30代にもなって好奇心が溢れた私は、急いで茂みを抜けた。するとだ―――――

 おっと先客か? 茂みの奥底、一角のような場所にブルーライトのような空からの明かりが、指した。数センチほど生えている草むらの中に、明るい水色のレジャーシートに座り首を上げて夜空を眺めている。

 珍しいな、こんな夜にリスクを冒してここへ来るのは恐らく私かここを撮るため二年挑んだ写真家だけであろうと考えていたのに。

 まぁいいや、とりあえず私の定位置を探そう。そうして彼の平行にも及ぶ位置がベストだと感じ地べたに腰掛ける。そして彼の方へと首を向けた途端、

 驚いた。約一万キロも離れた標高もあるこの地に、私と同じ、日本人がいるだなんて。それに何か漂う。この静かな夜風に流れて、そこから親近感というのが身体にヒシヒシと伝わってきつつ、湧き始めた。

 そうだ、カメラだ! さっきは後ろ姿で見えなかったが彼も上等なカメラを手に持っている。一眼レフ―――――それに私と同じ旧式。いいのを持ってるな。彼に向かって軽くグッジョブをした。

 って、いかんいかん。咄嗟に首を振った。驚きもだが、ついつい彼に意識を。いくらなんでもこんな事で惑わされてはならない。 

 私は使命に全うするもに、この場をコレに収める。その為にはるばるやってきたのだ。それは彼も同じだろう。さっきから何か独り言を呟き、まるで誰かと話しているみたいだ。それなのに私の存在には一向に気づいていない。

 撮る前には心情を落ち着かせ、カメラに私の心を入れるためルーティンを行った。そしてここを撮る誰よりも最高な写真を収める―――――――撮り終えたのを見てもまさに最高傑作だった。ピントのブレも風による妨害も防げた。

 しかしだ。こればかりはどうも偶然なんかでは済まない。奇跡というのを感じる。話しかける以外ない。

「Bonjour」

 気軽に挨拶を掛けると同時に彼へと近づく。するとカメラから驚くように私に視線を向けた。しかしだ、何故かそのまだ若い男性は、ここにも筆頭するほどの雫が一滴頬に垂れていた。

 ここに感動したのか、そうだろう。ここまで試練を超え、たどり着けたのだから。

 一間置いてからBo…Bonjourと警戒しながら返してきた。

 突如現れた人間に少しあわただしい様子。言葉を探している。

「ごめんなさい。遂出来心でからかっちゃった」

 彼は全てを察し苦笑いだが納得してくれた。

「驚きました。まさかここで日本人と会えるなんて。とても不思議で感じ光栄です」

 そう握手を求めてきた。

「ええ、とても奇跡を感じました」

 天の川の下で約束かのように結ぶ握手は、硬くも感じた。

 お互い思考は違うが、意思疎通できたような気がする。

「あなたはどうしてここに?」

 するとその彼は、胸元辺りを軽く摘まみながらそっと下に向かって微笑んだ。

「想いを伝えにきました」

「想い………?」

 最初は何を言っているのかと思った。カメラを持っているのにも関わらず、写真の明確さよりも、よくもわからない想いを伝えに来たという彼に申し訳ないが少々変わり者だと思ってしまった。

 しかしそんな彼は、ここに来る事が、ある約束だったと言う。

 そこで私も彼に興味が沸き、詳しく訊くことに。すると彼は、嬉しそうにその約束であった高校時代の同級生を楽しそうに何分にわたって話続けた。

「君の撮った写真、私にも見せてもらえないかな?」

 彼の話を聞いた後、思わず彼の目的が理解し、カメラを拝見したいと欲が増した。彼は素直に貸してくれて、撮ったのを拝見すると、私の鼓動は揺れた。

 素晴らしい。こんな油絵とかで見るような完璧な写真を撮れるなんて。一等星とも言える、オーロラよりも目立った一つの流れ星が湖の垂直にぴたりと収まっている。湖の風による揺れもなくまるで静止画。

 今まで数々見てきたどの写真とりもそれが断トツと言えるほど、まさにここで写真を収めた本人に筆頭するくらいの上物。

 参ったと言わんばかり彼の写真に没頭してると、訊いてきた。

「あなたもお撮りになられましたよね?」

「え…えぇはい」

 遂動揺してしまった。この男、一体何者なのか。すると今度は私に向かってそっと微笑み、

「映ってますよ、あなたの写真にも―――――――」

 彼の想いは私の中にもあったという。