生前、高木ひまりを羨んでいた。
 その美貌があれば、その学力があれば、その運動能力があれば、その環境があれば、その才能があれば……。
 恵まれていることを羨んだが、それと同時にひまりは恵まれ過ぎていたのだと思った。もしも自分が彼女だったら、きっと素晴らしい人生を送っていただろう。
 しかしそれは過ぎた夢物語なのだ。
 だから思った。
 彼女のように幸福で満ち溢れていなくていいから、ただ普通の幸せをください、と。
 しかしサンタクロースはあろうことか、願望よりも妄想を運んでくれた。高木ひまりとして、また初めから人生をやり直す機会をくれたのだった。
 思ってもみない幸運だった。