美桜は本当に可愛い。
 まだ言葉を話すことはできないけれど、言葉に似た何かなら発することができる。「あうあう」と泣き声を上げて、短い手を懸命に上げて甘えようとする姿は愛おしい。
 ひまりが抱きかかえると、おっぱいを欲して胸に顔をうずめる。美桜がどんな行動をしても、今のひまりには可愛く見える。
 美桜はよく泣く子だけれども、普段保育園でそういう子を相手にしているから平気だった。むしろもっと泣いて感情表現を沢山して欲しいとも思う。
 泣くときは決まっていて、嫌に思うことがあったときと、凛に抱かれたときだ。
 どうやら凛は抱くのが下手らしく、腕に乗るやいなやすぐに泣いてしまう。しかしじゃれて遊ぶときにはそんな素振は一切見せないのだから、嫌われているわけではないのだろう。男性の腕がごつごつしているから不快に思っているのだろうか。
 残念だけど美桜の気持ちはひまりには分からない。
 育児は大変だけれど、嫌ではない。楽しいとは少し違う。思い通りにいかず、大変な事ばかりでお世辞にも楽しいとは言えないのが育児というものだと思う。けれども将来の美桜のことを思えば、何だってやろうと思えたし、何よりも美桜の笑顔を見た時には有頂天になれた。
 思い通りにはいかなくても、美桜が健やかに育ってくれさえすれば、それでいい。
 そしていつか、家族三人で出かける日がくるといいなと願う。