秋晴れの町を、手を繋いで歩いた。
 休日に凛は制服で、ひまりは私服で歩いていたから異質に見えたのだろう。すれ違う人の大半はひまりたちのことを横目で見たり、場合によっては二度見をしたりした。
 その中には恐らく偏見によって蔑みの目を向けている人もいたが、凛が傍にいると思うと、不思議と平気だった。拒絶反応を起こすことは無かった。
 隣にいる凛が、まさに心の支えとなってくれた。
 しばらく歩いていると、視線を向けられることにも慣れてきた。
 周囲の細かな所に注目できるようになって、自分たちが手を繋いでいたことに気づいた。
 まるで恋人のようではないか。
 そう思うと、顔に血が昇っていくのが分かった。自分では見えないが、きっと顔は真っ赤になっているだろう。
 隣にいる凛に顔を見せることができない。こっそりと横目で彼を見る。
 凛もひまりと同じで恥ずかしそうにして、しかしそれを隠そうとして表情を取り繕っていた。無駄に真面目そうな顔をする彼が、いつもの彼らしくなくて何だか笑えた。
「ん、どうした?」
 ひまりが笑うと、凛がようやく顔を向けてくれた。
「いや、何か私たち、恋人みたいだねって思った」笑いながら言った。
「確かに。そう見えるかもな」
「そう見えるのも悪くないんじゃない?」からかうように言ってみた。
 ひまりとしては、普段、強気な凛へのドッキリみたいなものだった。
 しかし凛が急に黙ってしまうものだから、その言葉を肯定しているように感じてしまう。
「……まぁ、それもそうかもね」
 顔を逸らして、呟くように言った。
 二人はまた、黙ってしまう。気まずい空気が流れる。
 学校への道のりはまだ遠い。しかしその時間が短く感じた。
 秋の町に落ち葉が舞う。青春の香りがした。