自分でもはっきりとは分かっていない。
 誰かに触れることを恐れているのか、誰かに触れられることを恐れているのか、誰かを傷つけることを恐れているのか。あるいはその全てか。
 しかし根底にある部分は明白で、親父を包丁で刺したあの日の自分がずっと今も尾を引いている。その血で溢れた映像は、ひまりを家に閉じ込めるには十分だった。
 たった数メートルしか離れていない向かいの家で、あと十年もしたら同じことが起こる。刺すのは自分ではないが、刺すと決めたのは過去の自分だ。それは罪なのだ。人を殺める罪を犯した自分には、この世界は眩しすぎた。
 もしかしたら、ひまりの居場所はここしかないのかもしれない。