大手コンピューターメーカー大日本富士株式会社に入って、川崎工場で、工場実習をしたあと4月25日に初任給が出た。
 この初任給で、今まであこがれだった、マドンナ、大西昌代を誘って、ごちそうしようと思い、初めて、電話して誘った。
 なぜ、今まで誘わなかったのか。
それは、泰二が、会話に自信がなかったのである。
女性と二人きりになったとき、何を話せばいいのか、分からなかったのである。
 それで、大学4年間で妄想がふくらみ、はじめてのデートで、いきなり、
「結婚したいと思っている」
と言ってしまったのである。
 大西昌代のテニス部でのことはわかるが、
二人で会ったこともなく、どういう性格で、どういうものが好きで、どういう趣味か全く知らなかったのである。
大西昌代に、
「考えとくわ」
と言われて、
 そのまま、返事をくれるのをずっと待っていたわけである。
次の日、一週間、一ヶ月、いっこうに返事がない。
泰二は、ひたすら返事を待っていたのである。
 そのうち、泰二は、自分がバカに見えてきて、会社を辞め、もう一度、いろいろ、女性のことも含めて、修行し直そうと思い、大学院に入り直したわけである。
 泰二は、まず、大学院で研究し、理学博士を取得した。
科学者のたまごとなり、いちおう一つの目的は果たせたと思い自信がついた。
 次は、女性だと思い、女性と会うことにおじけづかないようにしたいと思い、そのためには、風俗が最適だ、といろいろ考えたすえの結論である。
 高田馬場のさかえ通りにあるサテンドールというファッションヘルスに行くことにした。そこで、ついたリカさんという人。
いろいろ会話し、会うときには、ロッテリアのハンバーガーを2人前買っていって、二人で食べたり、中で、ラーメンをたのんで、いっしょに食べたりもした。
大学を出た後に勤めた会社の帰りに毎週、かよっていた。
おかげで、女性に対する変なおじけづくこともなくなった。
 泰二が、めざしていたものを手に入れた気がした。
そのおかげで、いろいろなことに対して、寛大さが身に付いたような気がする。
今、泰二は、90歳をこえた両親の介護をしている。
でも、泰二は、ヘルス通いでの修行のおかげで、介護が苦にならず、楽しめる心がめばえている。
 やはり、泰二は、仕事と、女性というのは、人生を豊かにしてくれる二大宝物だということに気がついた。