そうして。
神倉さんは話を始めた。
神倉さんは。
疑われてしまった。
あるクラスメートの財布を盗んだと。
原因は。
神倉さんの席の机の中に。
入っていたから、そのクラスメートの財布が。
神倉さんは。
言った、何度も。
『違う』と。
だけど。
信じてくれない。
担任の先生もクラスメートたちも。
それどころか。
クラス内から小声で。
『このクラスの中で盗むのは神倉くらいしかいないだろ』とか。
『神倉さんは盗みそうだもんね』など。
聞こえてきた、心無い言葉が。
それらの言葉を。
耳にしてしまった。
そのとき。
思った、神倉さんは。
もう、嫌だ。
こんな担任や、こんなクラスメートたち。
共にしたくない、学校生活を。
一緒にいたら。
気が狂いそうになる。
精神的に崩壊寸前になってしまった神倉さんは。
その翌日から学校を休むようになった。
学校を休んだ初日。
見た、神倉さんは。
『心が呼吸できる世界』
そこに繋がる真っ白な光の出入り口を。
神倉さんは話を終え。
「私の話はこんなところだな」
そう言った。
そんな神倉さんのブレスレット。
している、やっぱり。
真っ赤な色を。