「そんじゃあ、改めて。
 俺は那覇空澄(あすみ)
 よろしく」


 知っている、すでに。
 那覇のことは。


 それなのに。
 している、改めて。
 那覇も挨拶を。

 だから。
「うん、知ってる」
 そう言いながら。
 笑った、クスクスと。





 私と那覇のやりとり。
 それを聞いた神倉さんは。
「お前ら知り合いか」
 そう言った。

 神倉さんの言葉に。
 返答した、那覇は。
「南瀬とは小学校からの同級生だ」と。



 そのあと。
 那覇は神倉さんたちのところに合流して。
「よぉ」
 そう声をかけ。
 行った、話をしに。


 私も。
 那覇に続くように。
 進む、一歩前に。


彩珠(あじゅ)ちゃん」


 そのとき。
 呼んだ、惺月(しずく)さんが。
 私の名前を。


「『心が呼吸できる世界』が見える子たちは
 大きな悩みや心に傷を抱えている。
 だけど『心が呼吸できる世界』(ここ)では
 みんな心穏やかに過ごしているから
 彩珠ちゃんもくつろいでね」


 優しく穏やかで温かな惺月さん。

 そんな惺月さんは。
 人の心を和ませてくれる。
 ある、そんな力が。


「ありがとうございます、惺月さん」


 だから。
 できる、私も。
 心穏やかになる。
 そのことが。


「それじゃあ、私は戻るわね」


 惺月さんは部屋を出て。
 戻って行った、受付がある建物に。